戦場で武器・弾薬を運搬! ニュース報道では分からない「軍事ロジスティクス」の深淵
プロセスとしてのロジスティクス

また、民間企業であれ軍隊であれ、ロジスティクスとは組織の物流部署だけに任せておくことは許されず、組織全体で対応すべき領域である。
実にロジスティクスは、装備品もしくは商品の企画段階に始まり、その廃棄に至るまでライフサイクル全般について顧客(ユーザー)を支援することに他ならないからである。
つまり装備品の移送にとどまることなく、顧客が継続的に使用可能なことを保証する必要がある。装備品の企画、設計、サービス、補修部品といった一連の業務は、決して独立したものでなく、相互に密接に関係しているのであり、ロジスティクスとはまさに
「プロセス」
である。
確認するが、ロジスティクスについて真に理解しようとすれば、装備品の企画段階からその後の支援(サービス)や補修部品に至るまでのプロセス全般を視野に入れることが求められる。
当然ながら、戦争の遂行にはいわゆる「シューター」(兵器など)の確保だけでは不十分であり、兵士や物資、情報などの「流れ(フロー)」を維持する必要がある。
さらに、装備品もしくは商品の性能を最大限に発揮するためには教育および訓練も不可欠であり、こうしてみると、ロジスティクスの意味するところをさらに広範に捉えることが求められる。
「軍事ロジスティクスにおける革命」

イラク戦争では、軍事ロジスティクスの部外委託(アウトソーシング)が大きく進んだとされる。その理由のひとつは、大量の物資――とりわけ現地では調達できないハイテク装備品など――を遠く海外へと移送するノウハウに関して、民間企業の方が優れていたからである。
湾岸戦争でアメリカ軍は、約2か月間継続して戦えるための物資を事前に準備したが、イラク戦争では約1週間分の備蓄で攻撃を始めたとされる。そして、こうした状況を可能としたのが、衛星もしくは軍事衛星を用いた通信ネットワークの発展であった。最前線の部隊とロジスティクス担当の部隊が衛星で結ばれれば、どの部隊がいかなる物資を必要としているかを容易に把握できるからである。
実は、戦争においてロジスティクスとインテリジェンス(情報)は相互補完関係にある。また、歴史的に主要諸国の参謀本部制度が確立される過程では、そのロジスティクス部署とインテリジェンス部署が、オペレーション(作戦)部署よりも重要とされた。
さらに踏み込んで言えば、参謀本部制度とは元来、ロジスティクスに関する機能を強化する目的で生まれたものである。当然ながら、戦略、作戦あるいは戦術の策定とその実施を支える基盤が、ロジスティクスであり、インテリジェンスだからである。
また近年、軍事の領域では突発的なテロやゲリラ攻撃などに迅速に対応できるよう、現場あるいは最前線の部隊への権限委譲――民間では「アダプティブ」として知られる――の必要性が改めて認識されており、軍事ロジスティクスの領域も例外ではない。
なるほど今日の軍隊は主として情報通信技術(ICT)の発展の結果、最前線の状況が本国中央でもリアルタイムで把握できるようになった。それにもかかわらずアメリカ軍などは、一部に「任務戦術」の概念を採り入れて最前線の部隊への権限の委譲を進めているが、その狙いのひとつはもちろんテロやゲリラ対応である。戦いが始まって、その度に中央に指示を求めていたら、対応が後手に回ってしまう。