戦場で武器・弾薬を運搬! ニュース報道では分からない「軍事ロジスティクス」の深淵

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ウクライナ侵攻で注目を浴びた軍事ロジスティクス。その重要性と新たな課題について解説する。

鉄道とコンテナの活用

 ロジスティクスの観点から近代の戦争の様相を変えた大きな転換点は、疑いなく鉄道の登場であった。

 大量の兵士や物資を絶え間なく内陸部へと送り込め、しかも最前線で負傷した兵士を迅速に後送し治療を施すことが可能になった。その後のトラックの登場――自動車化――によっても、やはり戦争は変化した。

 また、20世紀後半でその代表的な事例はコンテナである。コンテナ化、さらにはパレット化の結果、必要な物資の迅速かつ大量の移送が可能になった。「軍事ロジスティクスにおける革命」のひとつと評価されるゆえんである。

 アメリカを中心として各国の軍隊でコンテナ――国際基準規格(ISO)コンテナ――が広く使用され始めたのは1980年代であり、前述の湾岸戦争では4万ものコンテナが用いられたという。だが、その半分は収納品を把握できず、現地で開梱(かいこん)し確認する作業が必要であった。その後のイラク戦争では、RFIDという電子タグの導入によってこの問題が解決された。

 つまり今日では、コンテナそのものはもとより、そこに収納された個々の物資についてもその所在を正確かつリアルタイムで把握可能な態勢が整っている。ロジスティクスの「可視化」が実現したのである。なお、不定形の物資を移送する際はコンテナではなく、パレットを用いるのが一般的である。「箱」ではなく「板」に載せて移送するとの発想である。

ロジスティクスを制する者はビジネスを制する

ドローンのイメージ(画像:pixabay)
ドローンのイメージ(画像:pixabay)

 ビジネスの世界には「ロジスティクス4.0」という概念がある。これは、人工知能(AI)、 モノのインターネット(IoT)、ロボティクスといった近年の新たな技術イノベーションとそれらの応用が、物流のあり方を根本的に変えつつあることを意味する。

 実際、こうした最先端技術の活用の結果、物流の「省人化」や「標準化」、さらには「装置産業化」が生じつつある。そして、こうした技術イノベーションの活用は、軍事ロジスティクスの領域でも大きな可能性を秘めている。

 民間企業であれ軍隊であれ、伝統的にロジスティクスに関わる大きな課題のひとつは、「ラストワンマイル」の移送であった。鉄道を用いても航空機を用いても、最前線までの「最後の行程」は、トラック、馬、最悪の場合はヒトに頼らざるを得ないとの事実は、歴史を通じてロジスティクス担当者を悩ませてきたのである。

 だが今後、このラストワンマイルは自動配達ロボットやドローンなどの運用によって、無人化が可能になるかもしれない。

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