自動車整備士を「職人」と呼ぶのは時代遅れ?──「求人倍率5.5倍」でも人が来ない不人気業界、残る「言葉の問題」とは

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全国9.2万拠点、5.9兆円規模で移動と物流を支える整備産業が、求人倍率5.45倍、事業者退出445件という静かな限界に直面している。カギは「職人」という呼び名にあるのではないか。

敬意を守るための呼称転換

整備士イメージ(画像:写真AC)
整備士イメージ(画像:写真AC)

 冒頭のデータを改めて整理すると、現状は次のとおりだ。

・全国の自動車整備工場数は「約9.2万拠点」
・自動車整備業全体の売上高は「約5.9兆円」
・従業員数は「約55.4万人」
・このうち整備要員は「約40万人」
・整備士の有効求人倍率は「5.45倍」
・養成校の入学者数は過去20年で「およそ半減」
・2024年度の休廃業・解散は「382件」
・倒産を含めた市場退出は「計445件」

これらの数字は、設備投資や人員確保の工夫だけでは説明しきれない構造的な揺らぎを示している。産業の持続可能性を考えるうえでは、この役割を社会がどう位置づけ、どのような言葉で扱ってきたのかを見直す視点が欠かせない。

 呼称の再検討は精神論ではなく、整備士を現代の技術社会に不可欠な専門職として再定義するための出発点となるだろう。

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