ホンダが渋谷に「スパイスカレー店」をオープン! 「おいおい…」「ちょっと食べてみたい」――いったい何が狙いなのか?
若者の体験接点不足

ホンダが20代の男女400人を対象に行った調査では、車に興味があると答えた人は32.8%にとどまった。20代の免許保有者226人に、気持ちよく運転したくてドライブをするかを尋ねると、約半数の46.5%があると答えた。しかし、運転が好きな人114人に理由を聞くと、車を走らせること自体が気持ちいいと答えた人は29.8%にすぎなかった。
自動車は実際に体験してこそ魅力がわかり、購入意欲につながる商品である。それにもかかわらず、若者が体験できる前段階の機会はほとんど存在しない。
背景には都市部の生活動線と従来の販売接点のずれがある。ディーラーは街なかで必ずしもアクセスしやすい場所にあるわけではない。試乗自体も目的化しやすい。若者は自分の行動に合わせて体験を選ぶ傾向があり、専用の行動に時間を割くことを避ける。このため、走行の楽しさは説明に依存し、デジタル広告だけでは十分に伝わらない。
都市を移動中に自然に体験できる接点を築くことが、自動車の価値を伝える上で重要だ。若者の行動に沿った接触の形成が、購入意欲を引き出す鍵になる。
ホンダが採った手法の特徴は、若者が日常的に通る都市の動線上にブランドを置いた点にある。渋谷はZ世代の移動の中心地であり、免許を持たない層も多く集まる場所である。この環境では、従来型のディーラー接触だけではブランド価値を十分に伝えられない。
スパイスカレーの提供は、都市での自然な接触を生む。短時間で体験できるため、日常の行動を乱すことなくブランドとの接点を作れる。味覚や香りといった五感をともなう体験は、映像や広告だけでは得られない印象を残す。さらに、SNSとの相性がよく、来店者の体験が周囲に広がることで、接触機会も増える。
都市空間を使って日常のなかで価値を伝える手法は、展示やショールームに頼る従来型の方法とは異なる。若者の生活リズムに沿ったブランド体験は、都市型マーケティングの新しい標準になる可能性がある。プレリュードの価値を理解させる前段階として、短時間で印象を残す都市型施策の効果がここに示されている。