台湾発「激安定期券」が都市を揺るがす! 月5800円で乗り放題、混雑と税負担の現実とは
台湾で誕生した激安地域共通定期券「TPASS」は、月1200元で都市圏の鉄道・バス・シェアサイクルが30日間乗り放題となり、利用者600万人超。都心過密緩和や郊外開発促進に寄与する一方、税金負担増や交通混雑など新たな課題も浮上し、都市交通の将来像を示すモデルケースとなっている。
公共交通乗り放題の影響と課題

台湾の公共交通、さらには都市自体に変化をもたらしつつある激安定期券「TPASS」だが、問題も生まれている。
ひとつ目は、多額の税金が投入されていることだ。TPASSは破格の価格で提供されるため、多額の補助金が必須である。政府はTPASS事業に年間20億元(約100億円)の予算を組んでいたが、利用者数が想定を大幅に上回り、予算が不足する事態となった。
ふたつ目は、交通網が需要に追いつかなくなったことである。TPASSの登場で公共交通利用者が増えると、鉄道やバスの混雑が激化した。台北市のベッドタウン、新北市でTPASSを利用している男性は
「空港MRTは殆ど座れなくなった」
「歩ける距離でも(TPASS所有者の多くが)電車を使うようになった」
と語る。
設備面でも対応が追いつかない例が目立つ。とくに台鉄(在来線)では、TPASS利用客が多すぎるため、ラッシュ時には改札口周辺が混雑する駅がある。台鉄では改札機システムの違いからTPASS専用改札を新設したが、利用者数に対して専用改札が不足していた。専用改札は徐々に増えているが、筆者(若杉優貴、商業地理学者)が取材した際も「TPASS専用通道」と表示された緑色の改札口に列ができていた。
こうした供給不足は台湾各地で見られる。しかし、都市圏内の移動がスムーズになり、人の流れのメインストリームが切り替わりつつある過渡期ならではの現象ともいえる。一方で、前述の男性は
「都心に行きやすくなったため、郊外・近郊エリアや鉄道の沿線ではない場所では閉店する古い店も出ている」
と語る。この人流の変化は、今後の台湾の都市構造に大きな影響を与える可能性がある。