エルグランド復活は「アルヴェル一強」の終焉か? 16年ぶり再始動、日産が仕掛ける“高級ミニバン経済圏”の再編劇
トヨタが9割を占める高級ミニバン市場に、日産が16年ぶりの新型エルグランドで再参入する。600万~900万円級の電動旗艦として、停滞した市場に「第二の基準軸」を打ち込めるかが焦点だ。
シーマ遺伝子の継承
新型エルグランドの価格帯は600万~900万円台とされ、日産の国内ラインアップにおいて旗艦の座を担う存在へと引き上げられる見通しだ。シーマやフーガといった伝統的な高級セダンが姿を消したいま、日産のブランド象徴は三列シートのミニバンへと置き換わる。かつての
「高級車 = セダン」
という価値基準を自ら解体しつつ、高級の基準そのものを移動空間に移す──それが今回の日産の意思表示である。
高価格帯でも成立すると日産が見ている根拠は、装備強化だけではない。e-4ORCEによる四輪制御、高剛性ボディ、徹底した遮音構造。これらの組み合わせで走りの質を底上げし、価格ではなく体験で評価される領域に持ち込もうとしている。また、プロパイロット2.0搭載により、高速道路でのハンズオフ走行やウインカー操作による車線変更支援も実現し、移動そのもののストレスを減らす方向へかじを切った。
もうひとつ重要なのは、電動スポーツタイプ多目的車(SUV)「アリア」との棲み分けだ。日産は電動化を単一の価値軸とせず、上位モデルをSUVとミニバンに二極化させる構図を描いている。アリアは電動プレミアムの象徴、新型エルグランドは“移動する上質空間”の象徴。その役割分担によって、ブランド全体の上層構造を組み替える狙いが見える。
新型エルグランドは、アルヴェル一強市場に割って入る競争であると同時に、「高級とは何か」を再び語り直す挑戦でもある。