エルグランド復活は「アルヴェル一強」の終焉か? 16年ぶり再始動、日産が仕掛ける“高級ミニバン経済圏”の再編劇
失われた15年の挽回

エルグランドの刷新は遅すぎた──そう指摘される背景には、日産がこのカテゴリーで長く存在感を失ってきた事情がある。2000年代後半、販売店網の再編によってブランドの扱われ方が変わり、高価格帯モデルを支える販売力が後退したことが最初のつまずきとなった。かつては
「高級ミニバン = エルグランド」
の時代があったが、販売網の後退とともに存在感が薄れ、モデルサイクルの遅延が追い打ちをかけた。
ブランドの立ち位置が曖昧だったことも大きい。ラグジュアリー層に振り切るわけでも、ファミリー層を本気で取りに行くわけでもない。その“中途半端さ”が、トヨタ陣営のアルファード/ヴェルファイアに市場を明け渡す結果につながった。
今回の新型エルグランドは、そうした停滞要因をひとつずつ反転させにいく構えだ。発電専用エンジンを組み込んだe-POWER、静粛性と剛性を両立させた新プラットフォーム。まずは走行面で上質さの定義を上書きしにきた。
デザイン面も刷新されている。ノートやアリアと共通する「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」を軸にしつつ、フロントグリルには組子細工をモチーフとして採用。大きな面と繊細なディテールの対比を生かし、日本庭園にある「間」と「整」の考え方を視覚化している。高級感を過剰に演出するのではなく、静かな威厳を帯びた存在感に寄せているのが特徴だ。
差別化の焦点は装備の豪華さではない。今回の日産は、競争軸を「体験」に移している。14.3インチの大画面ディスプレイによるUX再構築、BOSE製22スピーカーシステム、64色で制御可能な間接照明──いずれも数字で比較されるスペックではなく、乗る側の感覚に直接作用するアプローチだ。つまり「アルヴェルに対抗する」のではなく、
「乗ること自体の意味を変える」
方向に振り切ったということになる。