軽井沢バス事故から6年 低価格競争からの脱却こそが長距離バスの「乗客」と「運転手」を守る
道路運送法改正が生んだ「生存競争」

長距離バス、特にツアー客などを扱う貸し切りバスの運転者の労働環境については、いまだ極めて厳しい状況にある。先日、運転者の休息時間が8時間から9時間に延長される厚労省の報告案が了承されたが、実際に9時間休める保証は全くない。
2002(平成14)年の道路運送法の改正以来、多くの新規参入が起こったことから、バス業界における生存競争は激しくなった。生き残りをかけて低価格での受注が繰り返される中、運転手の手取りも低下し、なかなか成り手がない状態で、現状の労働力で仕事を回していかなければならない状態は変わっていない。
旅行会社などからの注文を受けるために安く請負価格を設定するためには、安全に関わるコストが切り捨てられることも常態化する。運転手が安全に運航するためには、体調をしっかり管理しなければならない。そのために国家資格を持った運航管理者が専任されているはずだが、経営者とは独立した立場で判断を下すべきその管理者が、
「経営者の意図を組んで法令違反を行うこと」
が往々にしてあるのだ。そのしわ寄せは運転者に押し付けられることになる。
構造化されたドライバーの疲労蓄積

例えば、運行計画では高速道路を利用することになっているにもかかわらず、少しでもコストを削るために一般道を通るように指示を与える。一般道を通れば、それだけ時間がかかるため、その分休息時間を削るなど、全体の運転時間の管理に運転者は苦しむことになる。
また一般道だと、高速道路とは違って歩行者や自転車などが身近にあることから、運転操作に注意力がより必要となる。疲労度も増す。しかも、その疲労の蓄積が先に述べたように
「構造化」
されているのだ。
こうした違反行為が行われないようにするためには、国による監査を行われなければならない。適正な競争が行われているかどうかをきちんと監視し、違反者があればそれを厳しく取り締まることが、規制を排除し、自由競争を促進する上での最低条件だからだ。
しかし、2002年の規制緩和による新規参入によって中小零細業者が多くなったことと、近年の行財政改革の中で、行政人員の削減が進められてきたことが相まって、バス業界に対する監査を的確に行うことが極めて難しくなった。
対象が限られた、しかも事前通知を伴った監査では、問題とすべき事業者を拾い上げていくことは極めて難しい。