救急車が「タクシー」代わりにされている? 無料搬送もはや限界? 過去最高717万件の出動数を考える

キーワード :
,
救急車の出動件数は2024年度に過去最高の約717万件に達し、高齢化とともにさらなる増加が予想されている。だが、不適正利用やモラル低下が医療資源の逼迫を招き、救急医療の質と効率が問われている。救急搬送の有料化や先進的な医療MaaSの導入など多様な対策が進む一方で、根本的な解決には至っていない。今こそ、個々が緊急時の対応を見直すことが不可欠だ。

国際比較で浮かぶ課題

救急車(画像:写真AC)
救急車(画像:写真AC)

 多くの病院で救急搬送の有料化が進んでいる。

 2024年6月から三重県松阪市の3病院で7700円、同年12月から茨城県の22病院で1万1000円から1万3200円の費用徴収が始まった。これは、紹介状なしで受診した際にかかる「選定療養費」を活用した制度である。医師が緊急性のない軽症と診断した場合に適用される。制度導入後、三重県松阪市では2024年の搬送者数が前年より12.1%減少した。2025年以降、救急車の出動件数の抑制が期待される。

 また、2025年6月に神奈川県横浜市で開催された「第28回日本臨床救急医学会総会・学術集会」では救急車の有料化問題がディベートのテーマとなった。多角的な視点からメリットとデメリットが議論された。

 賛成意見としては制度の必要性が指摘される一方、

・経済的に厳しい層の利用抑制
・病院窓口でのクレーム増加

などの懸念も示された。

 諸外国では救急業務の料金制度が確立している。多くの都市で救急車の利用ごとに料金が請求されており、公営と民営が混在する。

 ドイツでは州によって異なるが、約2万~7万円が請求される。一方で医療費は保険制度が充実しており、基本1割負担で医療サービスを利用できる。

 米国も州ごとに料金が異なる。搬送距離や救命士同乗の有無で料金が変動する。例として、ニューヨークでは救命士なしで約9.8万円、救命士同乗で約18万円請求される(1ドル=140円換算)。医療費が高額で知られ、手術費用は100万円程度になることも多い。

全てのコメントを見る