Tommy february6『EVERYDAY AT THE BUS STOP』はなぜ今刺さるのか──別曲はTikTok16億再生、あの時の「バス停」とは何だったのか
2001年にリリースされたTommy february6の名曲。激動の時代に描かれた「バス停」という移動空間が、現代の高速化社会で失われつつある「待つ時間」の豊かさや偶然の出会いを象徴。技術進化が進む中で普遍の感情価値を問い直す、未来のモビリティと心の交差点を描いた一曲の深層に迫る。
激動の2001年の記憶

「EVERYDAY AT THE BUS STOP」がリリースされた2001年は、21世紀の幕開けとともに、世界が大きく揺れた年だった。1月にはギリシャがユーロを導入し、日本でも中央省庁の再編が実施されるなど、時代の転換点を迎えていた。
一方で、エルサルバドル地震やインド西部地震などの大規模な自然災害が発生。日本航空機の駿河湾上空ニアミス事故や、えひめ丸事故など、人為的な悲劇も相次いだ。
エンターテインメント分野では、任天堂がゲームボーイアドバンスとニンテンドーゲームキューブを、マイクロソフトがXboxを発売。家庭用ゲームの新時代が始まった。AppleはiTunesをリリースし、音楽体験を一変させるiPodを発表した。
映画では、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が歴代興行収入トップを記録。『ハリー・ポッターと賢者の石』や『ロード・オブ・ザ・リング』など、後に語り継がれる名作も公開された。
しかし、この年の世界を決定づけた最大の出来事は、9月11日の米同時多発テロだった。未曽有のテロは、人々の価値観と安全保障の常識を根底から覆し、国際秩序の枠組みを大きく変える契機となった。
そんな動乱と変革の只中でリリースされた「EVERYDAY AT THE BUS STOP」は、一見すると恋愛感情を歌った軽快なポップソングに見える。しかしその底には、不安定な時代においてなお人々が希求した「日常の小さな輝き」、そして「移動」と「出会い」への普遍的な願いが込められている。