首都高で見かける「AH1」という標識――いったいどんな意味?
江戸時代から続く日本橋は、国内道路網の起点としてだけでなく、約2万1000kmに及ぶ国際道路網「アジアハイウェイ1号線」の起点でもある。だが地政学的課題や法的未整備が現実的運用を阻み、構想は依然として道半ばにとどまる。未来の交通戦略を見据え、接続可能性を軸にその意義を再考する必要がある。
全長2.1万kmの陸の大動脈

日本国道路元標には、意外なほど重要な役割がある。それは、欧州までつながる国際道路網「アジアハイウェイ」の起点であることだ。
首都高速都心環状線を日本橋付近で走ると、「東京市道路元標」を示す架線柱の標識とともに、
「AH1」
と記された標識が現れる。ここがアジアハイウェイ1号線の起点であり、終点はトルコ西部、エディルネ県にあるカプクレ。ブルガリアとの国境に位置する町である。
アジアハイウェイは、1959年に国連極東経済委員会が提唱した構想だ。既存の道路を活用しながら、アジア諸国間の経済・文化の交流、そして平和的発展を目的としている。
構想自体は古いが、実際に動き出したのは21世紀に入ってから。日本は2003(平成15)年に正式参加を表明し、同年タイ・バンコクで「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定」が締結された。これを受けて、日本でも協定に基づく標識の設置が始まった。
アジアハイウェイ1号線の全長は約2万1000kmにおよぶ。日本橋を出発し、東名高速、名神高速、中国自動車道、そして福岡高速を経由して博多港国際ターミナルへと至る。
日本での終点が博多港となっているのは、そこから海路に切り替わるためだ。現在は新型コロナの影響で中断されているが、博多~釜山間のフェリー航路は自動車の輸送にも対応しており、陸路としての継続が可能となっている。