入江を猛スピードで走行 知床観光船事故の背景にあった各社の「過熱サービス」
4月23日、北海道の知床半島の沖合で乗員・乗客26人が乗った観光船の行方がわからなくなった。事故原因や遭難した観光船の動向が次々と明らかになっている。同船は、海が荒れているため出港をやめたほうがいいと忠告されたという。
これまでも多発してきた事故
もともと知床の観光航路は、網走市に本社を置く道東観光開発が1961(昭和36)年に開発した。現在、同社が運行している「おーろら」は491tの大型船。運行開始以来、同社は約500tの大型船を利用してきた。
対して世界自然遺産登録の時期から参入した業者は、いずれも20t未満の小型船を導入。入り江や岸壁に近づいたり、ヒグマを身近で見たりできることを強みとしてきた。結果、2005年以降、知床半島の観光船では沈没寸前の事故が多発してきた(『北海道新聞』2005年6月24日付朝刊)。
登録直前の2007年6月には、羅臼町の会社が運行する18tの小型観光船「カムイワッカ号」が知床岬の先端から8kmほどの地点で座礁し、乗客26人が重軽傷を負っている。この事故の際に観光船の危険な運行が行われている実態は大きく報じられている。
「地元の人によると、河口に現れたヒグマを見せるため極度に岸に近づいたり、入り江内を猛スピードで駆け回るといった“サービス”も過熱気味だという。ある地元住民は「猛スピードで、大波が立ち、転覆しそうなほど船が揺れたことがある」と話す。ある観光船業者は「決められた航路を守っているのか疑問だ。いつか事故を起こすのではと思っていた」と打ち明ける」(『読売新聞』2005年6月24日付朝刊)
この後も、2007年には捕鯨船とウォッチング船が衝突寸前まで接近する事故が、2017年には運行中の観光船で船長がスクリューに絡んだロープを外そうとして、海に潜って行方不明になるなど、座礁を含めて大小の事故は多発。幾度も行政による検査や指導は行われている。