なぜ自動車ディーラーは「自爆営業」に追い込まれるのか? 上司に相談すれば「お前が悪い」と叱責、過酷な無償労働の実態を考える
自動車ディーラー営業は、月間販売目標という厳しい数字のプレッシャーと、顧客対応の過酷な現場にさらされている。営業マンの多くは自腹や無償サービスを強いられ、心身を消耗する実態がある。筆者自身の経験も踏まえ、断りづらい構造のなかで追い込まれる営業現場の実態と、その背後に潜む問題点を明らかにする。
営業マンを追い詰める要求

営業マンにとって最も難しいのは、断ることだ。特に契約が目前に迫った場面では、顧客の要求をはっきり拒否できる人はほとんどいない。その結果、なんでもいうことを聞いてくれる営業マン、つまりYESマンになってしまう。
「もう少し安くならないか」
「オプションを無料でつけてほしい」
といった要求に対し、できませんといえば契約を逃し、他社に流れてしまうかもしれない。営業の世界では死活問題だ。だからつい「なんとかします」と口にしてしまう。
もちろん、できないことはできない。しかし、そのできないを社内でどう処理するかは営業の腕次第だ。上司に頭を下げる、工場に無理を頼む、そして自腹を切ることもある。すべては
「契約のハンコをもらってから考えればいい」
という背景があるからだ。結果として営業マンは顧客にとって都合のいい存在になる。約束を守れなければクレームが発生し、守れば次の無理難題が積み重なる。やがて営業マン自身が、自分の意思で動けない人間になってしまうのだ。
筆者もかつて、個人顧客に「通常3日かかる整備を2日で仕上げられます」と軽く約束してしまったことがある。整備工場からは無理の一点張り。顧客から怒号が飛び、上司には謝罪を繰り返した。それでも、その顧客とは退職まで良好な関係を保てた。
つまり、一度YESといえば、その責任は永遠に付きまとうのだ。