鉄道クラウドファンディングは「美談」に過ぎない?──市民の善意が覆い隠す、公的責任の「静かな敗北宣言」とは【リレー連載】ビーフという作法(6)

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近年、地方鉄道の保存費用をクラウドファンディングで賄う動きが拡大する一方で、総費用3億円に対し調達は7500万円に留まる事例も。ファン支援は重要だが、公的責任の空洞化や制度的保障の後退を招く危険性もはらみ、持続的な文化財保護の枠組み再構築が急務となっている。

地方鉄道を支える熱量経済

SL(画像:写真AC)
SL(画像:写真AC)

「ビーフ」とは、ヒップホップ文化における対立や競争を指す。1984年、ウェンディーズのCMで使われたキャッチコピー「Where’s the beef?(ビーフはどこだ?)」は相手を挑発する表現として広まり、その後ヒップホップの世界でも定着した。本連載「ビーフという作法」はその精神にならい、モビリティ業界のさまざまな問題やアプローチについて率直に議論する場を提供する。他メディアの記事に敬意を払いながらも、建設的な批判を通じて業界全体の成長と発展に寄与することを目指す。

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 近年、鉄道分野でもクラウドファンディング(以下、クラファン)を活用した資金調達が活発になっている。成功事例がメディアで取り上げられる機会も増えている。

 鉄道ライター・杉山淳一氏は、2022年10月7日配信の記事「ファンが地方鉄道を支援、今後はサブスクも? 鉄道系クラファンの新潮流」で、この動向を肯定的に紹介している。記事では、地方鉄道がクラファンを通じて「保存費用のために新しいお財布を持てる」とする杉山氏の見解が示されている。ファンの支援の輪を「互助の精神」と位置づけ、その広がりに期待を寄せている。

 杉山氏のリポートは、鉄道ファンの熱意や、経営が厳しい地方鉄道の新たな活路に光を当てる内容となっている。その意義を否定するものではない。

 ただし本稿では、あえて別の視点を提示したい。鉄道遺産の保護をクラファンに委ねる現状がはらむ構造的な問題に着目する。具体的には、公的制度の空洞化や、共通財に対する責任の所在といった点を中心に、批判的に考察を進めていく。

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