なぜ駅そばは「うまい」のか? 情報過多の現代で「早い・安い・うまい」が刺さる理由! 5月「根の上そば」閉店で考える
					岐阜県中津川市の「根の上そば」が122年の歴史に幕を閉じた。この立ち食いそば店は、長年にわたり駅という特別な場所で多くの人々に愛され続けた。駅そばの魅力は、限られた時間と空間の中で最大の満足を提供する工夫にあり、シンプルで素早い食事が求められる現代の都市生活において、重要な食のインフラとなっている。				
				
				移動の隙間時間を支配する駅そば

駅は移動の始まりであり終わりでもある。さらに、途中で立ち寄る場所でもある。この三つの役割が、移動と滞在の間に中間的な時間を生み出す。その時間に、人は「何をすべきか」を考えることになる。改札を出るのか、乗り換えるのか、数分待つのか――この短い時間で、最も少ないコストで最大の満足を得る行動が求められる。
ここで、駅そばは最適な方法でその需要を満たしている。座らず、待たず、選ばず、会話もなく、支払いも即座だ。決定を簡単にし、駅の設計とぴったり合っている。食事には、
・満腹感
・時間
・価格
の三つの要素がある。駅そば屋は、これらを移動の合間にうまくバランスを取る方法だ。
駅での食事時間は5~8分程度だといわれている。この短い時間で、麺を茹で、つゆを用意し、注文を受け、代金を支払い、食べ終えるという一連の流れができるのは珍しい。ファストフードでさえ、席を取ったり、注文時に選ぶものが多かったりして、効率が悪い。駅そばは、最初から早く食べることと素早く回転させることを最大化するように作られている。
・麺の湯通し時間
・天ぷらの作り置き
・必要最低限の調味料
・シンプルなメニュー
これらはコストを減らすためではなく、短時間で一番欲しいものを提供するために工夫されている。駅そばの本質は、まさにこの最小限の欲望を満たすことにある。