鉄道オタクはなぜ「経営者」気取りなのか? ネットが歪める鉄道愛の現在地! 穏健派オタクは大迷惑? その知識を社会の資産にする方法とは【連載】純粋鉄オタ性批判(1)

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インターネットが変えた鉄道オタクの生態系。時刻表から経営戦略まで、情報が溢れる現代で「疑似経営者」と化す彼ら。しかし、その熱量は時に「利用者不在」の暴走を招く。新幹線礼賛、地方鉄道切り捨て…データと理論武装した彼らに欠けた視点とは?鉄道オタクは敵か味方か?変革を迫られる鉄道業界、彼らの知識と情熱を「社会の資産」に変える処方箋を示す。

穏健派オタクへの敬意

鉄道(画像:写真AC)
鉄道(画像:写真AC)

 鉄道は、単なる移動手段ではない。そこには、技術、歴史、文化、そして人々の記憶が凝縮されている。しかし、近年、一部の鉄道オタクによる過激な行為や偏った言動が、この豊かな世界を歪めてはいないだろうか。本連載「純粋鉄オタ性批判」では、本来の鉄道趣味の姿を問い直し、知的好奇心と探究心に根ざした健全な楽しみ方を提唱する。万国の穏健派オタクよ、団結せよ!

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「鉄道オタク」という言葉は本来、鉄道を純粋に愛するファンを指すものであり、社会的に問題視される一部の「撮り鉄」や、SNSで過激な発言を繰り返す人々を指すものではない。辞書によれば、「オタク」は「ある事に過度に熱中し、詳しい知識をもっていること。また、そのような人」(デジタル大辞泉)と定義されており、そうした存在は鉄道文化の発展に貢献しているといえるだろう。

 鉄道ファンの多くは、鉄道に関する知識を深めたり、その魅力を広めたりすることで、文化の発展に寄与している。例えば、サッカーがプレイヤーとサポーターの双方によって支えられ、舞踊が演者や批評家、ファンによって成立するように、鉄道の世界も事業者や行政、そして鉄道ファンによって支えられている。具体的には、

・鉄道雑誌に積極的に投稿し、情報を共有する人
・鉄道写真展を開催し、文化の広がりを促進する人
・鉄道模型を地域のイベントに提供し、親子で楽しめる場をつくる人

といった活動を行う人も多く、その熱意が鉄道文化の発展につながっている。一方で、インターネット上では、過激な言動とはいえないまでも、

「鉄道事業者の経営者のような発言」

をするファンも見られることがある。鉄道に関心を持ち、深く考えることは意義のあることだが、鉄道経営には多様な視点が必要になるため、より広い視野を持つことが大切なのかもしれない。

 先日書いた記事「「夜行列車消滅 = 正常な進化」は本当か? 新幹線礼賛論に異議あり! 鉄道オタクに決定的に欠けた「利用者視点」とは」(2025年3月8日配信)では、筆者(北條慶太、交通経済ライター)は次のように指摘した。

「「鉄道オタク」の多くが時刻表やダイヤの最適化に関心を持ち、既存の枠組みに固執しがちであることがわかる。長距離移動の手段として、夜行列車の必要性を否定する「システム側の論理」に同調する心理も見え隠れする。鉄道好きであるがゆえに、鉄道事業者の視点に立ち、「あたかも自分が経営者である」かのように語る人々もいる。そのため、現行の新幹線中心のビジネスが正しいと考える人も多い」

このような言動がなぜ生まれるのか――本稿では、その背景を探っていく。

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