郵政民営化から20年! 日本郵便のトナミHD「800億円買収」に見る物流危機! ユニバーサルサービスの行方はどうなるのか?

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日本郵便によるトナミHDの買収は、物流業界におけるM&Aの新たな転換点となるか。燃料費高騰やトラックドライバー不足が深刻化するなか、自己資本比率50%超の健全経営を維持してきたトナミHDが、日本郵便の傘下に入る意義とは何か。本稿では、買収の背景にある物流業界の構造変化や市場再編の流れを踏まえ、その影響を多角的に分析する。

郵政民営化を巡る「因縁」

トナミ運輸のウェブサイト(画像:トナミ運輸)
トナミ運輸のウェブサイト(画像:トナミ運輸)

 余談ではあるが、この買収が発表された際、郵政民営化を巡る因縁を思い起こした人も多かったのではないだろうか。

 トナミ運輸は、かつて創業家である綿貫家が経営を担っていた。1955(昭和30)年から長期にわたり社長を務めた綿貫民輔氏は、自民党幹事長や衆議院議長などを歴任した著名な政治家である。同氏は小泉政権下での郵政民営化に反対する立場を取り、2005(平成17)年のいわゆる「郵政解散」選挙を機に自民党を離れ、亀井静香氏らが結成する国民新党に参画することになるのである。

 当時を思い起こすと、郵政民営化を巡るが争点のひとつが、郵便局のサービスの維持であった。特に地方における郵便局の役割として、全国一律での金融や物流機能を提供するという「ユニバーサルサービス」の維持の可否が、議論されていたのである。

 それから約20年が経過した現在、当時想定したのとは異なる形ではあるが、「宅配が運べない」といった物流持続可能性を巡る問題意識が大きくクローズアップされるに至っている。

 誤解を与えないために念のためいうと、開示資料を読めばわかるとおり、今回の買収には、このような政治的な背景があるわけではない。ただ物流危機をひとつの背景として、トナミ運輸が日本郵便の傘下に入るという展開には、歴史の巡り合わせを感じざるを得ない。

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