郵政民営化から20年! 日本郵便のトナミHD「800億円買収」に見る物流危機! ユニバーサルサービスの行方はどうなるのか?
- キーワード :
- トラック, 物流, 日本郵便, トナミホールディングス
日本郵便によるトナミHDの買収は、物流業界におけるM&Aの新たな転換点となるか。燃料費高騰やトラックドライバー不足が深刻化するなか、自己資本比率50%超の健全経営を維持してきたトナミHDが、日本郵便の傘下に入る意義とは何か。本稿では、買収の背景にある物流業界の構造変化や市場再編の流れを踏まえ、その影響を多角的に分析する。
路線便業界の変化と生き残り戦略

もう少しマクロ的な観点で俯瞰してみると、この買収は、路線便業界を取り巻く大きな変化の流れのなかで起きた出来事ともいえる。
かつて路線便業界は、地域ごとに有力企業が存在し、それぞれが市場を分け合う形で成り立っていた。しかし、現在では上位企業への集中が進んでいる。その要因のひとつとして、
「地域経済の衰退」
が挙げられる。工場の海外移転や人口減少により、地方発の貨物量が急速に減少しており、地方に拠点を置く物流業は苦戦を強いられている。
また、路線便のビジネスモデルは、多くの貨物をまとめて効率的に輸送することに強みがあるが、規模が大きい企業ほどシェアを伸ばしやすい構造となっている。その結果、貨物は上位数社に集中する傾向が強まっており、中堅以下の規模の路線便会社は
「貸切運行の割合を増やす」
ことで生き残りを図っているのが実態である。つまり、長期的に見て中堅以下の路線便会社が単独で存続するのは難しくなっており、大手企業の傘下に入って規模の拡大を図ることが、生き残るための必須条件となりつつあるともいえるのである。
物流業界は「規模の経済 = スケールメリット」が強く働く典型的な業界であり、今回の買収の背景にはこうした構造的な要因もあると考えられる。