電車内のリュック、もはや「前抱え」も迷惑扱い! 終わらぬ論争に終止符打てるのか? 迷惑行為ランキング常連問題を再考する

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都市の鉄道におけるリュックの持ち方が変化している。東京・大阪などの大都市圏で、マナーの変遷が社会の変化を反映し、2024年度の「迷惑行為ランキング」でも「リュックの持ち方」が上位に。混雑した車内でのパーソナルスペース意識の変化や、鉄道会社の取り組みが影響し、今後はインフラ自体がリュックの持ち方を規定する時代が来るかもしれない。

パーソナルスペース意識の変革と影響

電車(画像:写真AC)
電車(画像:写真AC)

「リュックの持ち方」に関する議論がここまで揺れ動く背景には、主に三つの要因がある。

 まずひとつめは、都市の人口動態とモビリティ環境の変化だ。東京や大阪といった大都市圏では、これまで「通勤ラッシュ」を基準にマナーが形成されてきた。しかし、2020年代に入ると、リモートワークの普及や訪日観光客の増加が電車の混雑状況や利用者の行動パターンに大きな変化をもたらした。例えば、かつての満員電車は「詰めれば乗れる」状態だったが、今では

・スーツケースを持った観光客
・リモートワーカーのオフピーク移動

といった新たな要素が加わった。その結果、どの持ち方も一定の不満を生む状況が生じている。

 次に、パーソナルスペースの概念の拡張がある。パンデミックを経て、人々の「パーソナルスペース」への意識が大きく変わった。以前は「物理的にぶつからなければ問題ない」とされていたが、現在では「心理的な圧迫感」も重要視されるようになった。例えば、

「前抱えリュックは視界に入るだけで不快」
「スマホ操作時の指の動きが気になる」

といった指摘が増えているのは、この意識の変化を反映している。

 最後に、企業のマーケティング戦略と鉄道の設計思想も影響を与えている。2010年代には「前抱え推奨」のキャンペーンが行われ、前抱えリュックが商品化されたが、2020年代には「手に持つ推奨」に移行し、手持ち用バッグの開発やロッカーサービスの強化が進んでいる。さらに、鉄道車両の設計も変化の兆しを見せている。網棚の利用促進や立ち席スペースへの荷物フック設置などがその例だ。

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