平成の特別番組「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」 なぜバスはクレーンで吊り下げられたのか? 過激な笑いが許された時代を読み解く

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「バス吊り下げアップダウンクイズ」の過激な演出が許容された背景には、1989年から1996年の激動期における視聴者の欲求とメディアの競争が深く影響していた。社会の変化に伴い、過去のテレビエンタメがどのように進化し、現代ではなぜ受け入れられなくなったのかを探る。

バブル経済と共に消えた過激バラエティ

廃バス(画像:写真AC)
廃バス(画像:写真AC)

「お笑いウルトラクイズ」が放送されていた1989(昭和64)年から1996(平成8)年は、日本経済がバブル期から崩壊へと移り変わる激動の時代だった。この時期のバラエティ番組は、視聴者の「非日常」への欲求を最大限に満たすために過激化し、体を張った芸人たちが“消費”されることを前提とした構造を持っていた。

 テレビは視聴率競争のなかで、いかに「ありえない」光景を作り出すかに心血を注いでいた。バスがクレーンで吊るされ、海に沈められる演出は、その極端な例だ。視覚的インパクトを追求したコンテンツの象徴であり、経済的余裕がある時代だからこそ、「これほどのことができる」という誇示が視聴者の快楽につながり、制作側もさらに過激な演出を競い合った。

 バブル崩壊後、不景気が深刻化するにつれ、社会全体がストレスを抱え、それを発散する手段として「芸人がひどい目に遭う」ことが一種のカタルシスとなっていた。こうした時代の空気とテレビの消費文化が重なり、「バス吊り下げアップダウンクイズ」のような演出が受け入れられていった。

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