日本車に襲いかかる「トランプ関税」――関税回避か生産移転か? トランプ新政権が仕掛ける「製造業回帰戦略」を読み解く

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トランプ大統領が示唆する自動車関税の導入は、米製造業復活を目指す一環として重要な動きとなっている。特に、メキシコからの輸入車に最大200%の関税を課す方針が現実味を帯び、米国企業や外国製造業者に大きな影響を与える可能性が高い。貿易戦争の主戦場が軍事から経済へ移行し、関税政策が米国の経済的利益を守る手段として強化されつつある。

米国内生産促進の狙い

ホワイトハウス(画像:Pexels)
ホワイトハウス(画像:Pexels)

 積極的な関税発動の狙いはどこにあるのだろうか。そのヒントは、2月7日にホワイトハウスで開催された日米首脳会談にある。

 今回の会談で、石破総理は日本が2019年以降5年連続で最大の対米投資国であることを述べ、今後対米投資額を1兆ドルという未曾有の規模まで引き上げ、米国との経済面での協力をさらに強化したいと伝えた。トランプ大統領は日本企業による対米投資を強く歓迎すると表明した。

 また、トランプ大統領はバイデン前大統領が下した日本製鉄による買収阻止の決断を踏襲しつつも、日本製鉄によるUSスチールへの投資には非常に前向きな姿勢を示した。つまり、トランプ大統領はMAGAに適合する外国の行為を積極的に受け入れる方針を取っているのである。

 このような背景が、トランプ大統領が積極的に関税発動を展開していく理由にもつながっている。冒頭でホンダが関税が恒久的なものになれば米国内での生産強化に言及したが、トランプ大統領は外国企業に対して、米国内で生産する場合には関税が掛からないことを強調しており、米国に対する投資を促す狙いがある。

 外国企業に米国内で生産することで関税を回避する動機を与えることによって、米国の製造業の再建や雇用創出を拡大しようとしているのだ。

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