日本車に襲いかかる「トランプ関税」――関税回避か生産移転か? トランプ新政権が仕掛ける「製造業回帰戦略」を読み解く
- キーワード :
- 自動車
トランプ大統領が示唆する自動車関税の導入は、米製造業復活を目指す一環として重要な動きとなっている。特に、メキシコからの輸入車に最大200%の関税を課す方針が現実味を帯び、米国企業や外国製造業者に大きな影響を与える可能性が高い。貿易戦争の主戦場が軍事から経済へ移行し、関税政策が米国の経済的利益を守る手段として強化されつつある。
米国の製造業復活と関税政策

では、トランプ大統領が自動車関税をちらつかせる理由は何だろうか。トランプ大統領の狙いは、米国を再び偉大な国家にすること(MAGA)だ。彼は関税を手段として、諸外国から最大限の譲歩や利益を引き出し、米国の経済的繁栄と政治的安定を追求している。
米国は長年、外国の紛争において財政的かつ人的な負担を最も負わされてきた。米国の支援によって成長した国々の安価な製品が米国内に大量に流入し、その結果、製造業をはじめとする米国企業は大きなダメージを受けてきた。これによって、米国は外国から搾取され続けてきたという
「被害者意識」
を抱えている。要するに、トランプ大統領は自己防衛の立場を取っており、まずは貿易収支を基準にして米国の貿易赤字を解消しようとしている。その手段として積極的に関税を導入しているのだ。
このように考えると、自らを被害者と捉え、そのための行動は自衛だと自認するトランプ大統領が関税政策で消極的な姿勢を取ることはないだろう。もちろん、高い関税を課すほど諸外国から報復関税を受けるリスクが高まるため、国民の経済的不満が広がらないように一定のバランスを考慮する必要がある。
しかし、USスチールなど米国の製造業の復活を目指すためには、外国の製造業を対象にした関税には躊躇しないと考えられる。