電車待ちの「イライラ」なぜ減った? 約25年で10ポイントも低下! 長年の調査で判明した鉄道利用者の意識変化とは
「電車待ちのイライラ」が20年以上で10ポイント以上低下――博報堂生活総合研究所の調査によると、1998年に74.7%だった「待ち時間のストレス」を感じる人の割合が、2024年には63.9%に減少した。スマートフォンの普及、運行情報の充実、駅ナカ施設の進化が要因と考えられる。待つ時間はもはや「退屈な時間」ではなく「活用できる時間」へ。モビリティ環境の変化が、移動の価値観にも影響を及ぼしている。
不確実性の排除が生むストレス軽減

スマートフォンの普及とともに、鉄道各社の情報提供も飛躍的に向上した。1990年代、駅で電車を待つ人々は「あと何分待つのか」を知る術がほとんどなかった。掲示板には「遅れ」と表示されるだけで、実際に何分後に電車が到着するのかは不明だった。
現在ではリアルタイムで運行情報を確認できるようになり、ホームの電光掲示板には秒単位で到着時刻が表示される。スマートフォンのアプリを開けば、電車の位置情報や遅延の原因まで把握できる。
人間のストレスは
「不確実性」
によって増幅される。どれほど待たされるのかわからない状況は、大きな精神的負担となる。しかし「あと3分で来る」とわかれば、たとえ遅延していてもイライラは軽減される。これは現代の鉄道利用者のストレス低減につながっていると考えられる。
デジタル社会の進展は、「待つこと」への耐性にも影響を与えている。インターネットが普及する以前、買い物には時間がかかった。欲しい本を探すために何軒も書店を回り、CDショップで新作の入荷を待つのも当たり前だった。しかし今では、クリックひとつで商品が届き、音楽や映画も即座にストリーミングで楽しめる。
一見すると、現代人は「待つこと」に対して短気になっているようにも見える。しかし実際には、「待たされる時間」をどう過ごすかの工夫が進み、待つこと自体へのストレスが軽減されているのではないか。
電車の待ち時間についても同様で、「時間を持て余す」という感覚が薄れたことで、「待つこと」への抵抗感も和らいでいるのだろう。