福岡と山口の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?
関門海峡に新たな架橋計画「下関北九州道路」が浮上し、地域経済の発展を加速させる可能性を秘めている。福岡市、北九州市、下関市の三都市が一体となり、アジアとの経済連携を強化するこのプロジェクトは、年間3万5400台が通行する関門橋に代わる新たな交通網を提供し、九州全体の産業発展を支える重要な基盤となるだろう。
福岡・北九州・下関の産業融合

福岡・北九州・下関の大都市圏には、まだ十分に生かされていない大きな可能性がある。北九州市は、重厚長大産業から水素、環境、デジタル産業への転換を進め、下関市は水産業に加えて自動車関連産業を育てている。福岡市は、商業、サービス、IT産業の集積地として確固たる地位を築いている。この三都市の産業構造は、お互いに補完し合う関係にある。
また、この地域はアジアへの重要な玄関口としても機能している。関門海峡は、古くから国際貿易の要衝であり、現在でも北九州港は国際物流の拠点として活躍している。この立地条件は、アジアを見据えた国際競争力の高い経済圏を生み出す可能性を秘めている。
この点が、他の海峡横断プロジェクトとは一線を画す理由だ。架橋の主な目的は物流の動脈強化だが、それ以上に新たな経済圏の誕生が期待されている。福岡都市圏はアジアの玄関口として機能し、関門海峡を挟む下関・北九州都市圏(120万人規模)が融合することで、日本の新たな成長エンジンが生まれようとしている。
福岡市は市内中心部の大規模再開発で注目される一方、北九州市は2005年以降、人口が100万人を下回り減少が続いている。これまで衰退している印象を持たれがちな北九州市だが、実際には
「世界の環境首都」
を目指し、先進的な施策により世界から注目を集めている。