福岡と山口の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?
関門海峡に新たな架橋計画「下関北九州道路」が浮上し、地域経済の発展を加速させる可能性を秘めている。福岡市、北九州市、下関市の三都市が一体となり、アジアとの経済連携を強化するこのプロジェクトは、年間3万5400台が通行する関門橋に代わる新たな交通網を提供し、九州全体の産業発展を支える重要な基盤となるだろう。
早鞆ノ瀬戸の交通効率

関門海峡を通る交通インフラは、日本経済の重要な部分を支え、約120万人の都市圏を形成している。しかし、既存の道路には深刻な問題がある。日常的な渋滞に加え、事故や工事による通行止めも頻繁に発生している。橋とトンネルの二重ルートがあるにもかかわらず、安定した交通の確保には至っていない。
さらに、新幹線トンネルを除く交通インフラは、海峡最狭部の早鞆ノ瀬戸(はやとものせと)付近に集中している点も問題だ。この場所はかつての国際貿易港である門司港に近いが、現在の北九州市の都市構造には効率が悪い。響灘や小倉の中心市街地から離れており、工業地帯や環境関連産業の集積地からも遠い。
これが、関門海峡に新たな架橋が計画された背景である。
このような状況から、下関北九州道路は他の海峡横断プロジェクトとは異なる経緯をたどってきた。1998(平成10)年の第5次全国総合開発計画では、伊勢湾口道路や紀淡連絡道路、豊予海峡道路など、日本各地の海峡を結ぶ大規模な架橋構想が含まれていたが、調査が行われたものの、2008年には財政難を理由に凍結された。しかし、下関北九州道路は例外だった。2016年11月、当時の石井啓一国土交通大臣は国会で
「他の海峡横断プロジェクトとは違いがある」
と明言し、関門海峡を強化することが必然だと認識されるようになった。