南海電鉄、なぜ「通天閣」を買収? “大阪のシンボル”再生に向けた都市開発と鉄道事業の未来を読み解く!
南海電鉄が通天閣を買収した背景には、鉄道収益の低下を補うための観光・不動産強化策がある。新世界やなんばエリアの再開発により、年間200万人以上が訪れる観光名所を中心に地域活性化を図り、競争力強化を目指す。大阪万博に向けた都市開発が進む中、南海の戦略的な動きが注目される。
南海電鉄の成長戦略と通天閣再編

2025年に開催される大阪万博については、準備の遅れや運営費用の膨張などさまざまな課題が指摘されているものの、大阪では依然として高い期待が寄せられている。
日本国際博覧会協会は、来場者数を約2820万人と予測しており、そのうち
「約350万人」(12%)
はインバウンド(訪日外国人)と見込んでいる。万博効果を期待して、新たな施設の開業が相次いでいる。
そのなかで、12月4日に南海電鉄が発表したのは、大阪のシンボルである通天閣を運営する通天閣観光の買収だ。万博を軸にした再開発が進むなかで、南海電鉄の買収にはどのような成長戦略があるのだろうか。
通天閣は、大阪のシンボルとして知られる展望塔で、初代は1912(明治45)年に建てられ、日本三大望楼のひとつとしても有名だった。しかし、戦時中に供出され解体された。現在の通天閣は1956(昭和31)年に再建され、登録有形文化財にも指定されている。これまでの運営は、地元の新世界商店街などが出資する通天閣観光が行ってきた。
100周年を迎えた2012(平成24)年以降、観光客増加を狙った改修工事が進められてきた。特に2022年にオープンした、地上22mから滑り降りるタワースライダーは話題となり、多くの観光客を集めている。周辺の商店街も含め、大阪の賑わいを象徴する観光地だ。