年間3000億円の経済損失! 慢性的な「熊本県の渋滞問題」、TSMC進出で解決の糸口は見えるか?

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熊本市は年間2890億円の経済損失をもたらす深刻な渋滞問題に直面している。渋滞の原因は、急増する交通量と半導体工場の進出による人口増加。公共交通の改革が急務となる中、熊本市は渋滞を半減させる野心的な目標を掲げ、都市改革に乗り出した。

経済規模の格差が示す都市間競争

福岡市(画像:写真AC)
福岡市(画像:写真AC)

 熊本市と福岡市には、どの程度の格差があるのだろうか。人口に注目すると、2024年10月現在、熊本市の人口は73万7409人。一方、福岡市は165万6737人と、熊本市の約2.2倍の規模だ。この人口差は、両市が持つ経済力や社会的な求心力の違いを示唆している。

「熊本県推計人口調査結果報告」によれば、2022年10月から2023年9月までの1年間で、熊本市から県外へ転出した人は1万8265人。その中で、福岡県への転出が4432人と最も多く、47都道府県の中で最大だった。

以下は、2015年以降の福岡県への転出人数の推移である。

・2021年:4347人
・2020年:4596人
・2019年:4720人
・2018年:4672人
・2017年:3691人
・2016年:4584人
・2015年:4113人

 福岡県からの転入もあるが、毎年わずかに転出が上回る傾向が続いている。例えば、2022~2023年には福岡県から熊本市への転入は4098人で、334人の転出超過となった。

 熊本市単体ではなく、広域的な動向を見ると、異なる傾向も浮かび上がる。2022~2023年には、熊本県全体で県外への転出が3万6412人だったのに対し、県外からの転入が3万9517人と転入超過となった。これには、TSMCの工場が立地する菊陽町を中心とした影響があると考えられる。

 人口移動の背景には、各都市の経済的求心力が影響していると考えられる。基本的な経済指標として「平成28年経済センサス活動調査」から、熊本市と福岡市の事業所数を比較してみると以下のような差がある。

●熊本市
・総事業所数:2万8310事業所
・総従業者数:30万5105人
・製造業や医療・福祉分野に集中し、地方都市として地域密着型の役割が強い。

●福岡市
・総事業所数:7万2284事業所
・総従業者数:86万6930人
・情報通信業や専門技術をともなうサービス業の規模が大きく、先進的な都市型経済を形成している。

 さらに、福岡市には大規模事業所(従業員300人以上)が199所あり、従業員数は12万3651人に達している。熊本市の統計にはこのような大規模事業所に関する記載がなく、両市の経済規模の差を物語っている。

 福岡市と熊本市の人口や経済指標を比較することで、両市の格差が明確に浮かび上がる。特に、福岡市の多様で先進的な経済構造は、熊本市との差を広げる一因となっている。この格差を埋めるためには、熊本市が持つ地域密着型の強みをさらに生かし、広域的な競争力を高める施策が求められるだろう。

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