現役ドライバーが物申す タクシー料金“15年ぶり”値上げで「本当に割を食う人たち」とは
タクシー業界の内情を知る現役ドライバーが、業界の課題や展望を赤裸々に語る。今回は、15年ぶり料金値上げに見る業界の行く末について。
タクシーが不可欠な人とは誰か

筆者が先日体験した例だ。
13時過ぎ、東京都大田区雑色の狭いバス通りで、車椅子の老人とその娘さんらしき女性が手を上げた。行き先はJR蒲田駅の西口。ところがその老人は、交通事故の後遺症で左脚が硬直したまま曲がらない。
おまけに90kg以上はあろうかと思われる大きな体だ。娘さんと筆者だけではどうしても乗せることができない。近くにいた親切な通行人にも力を貸して、やっとこさ乗車してもらうことができた。
車椅子はトランクルーム、娘さんは助手席に。老人は、はいつくばって動けない状態で「うぅー、苦しいぃー、早く着けてくれぇー」とうなっている。
「大丈夫ですか? おつらいですか?」と声を掛けると、「苦しいけど我慢するから、1秒でも早く駅に着けてくれぇー」……。降車いただいた際の苦労も、想像に難くないはずだ。
もう1件は、重い透析患者の送迎だった。60歳前後の男性。歩くのもやっとといった感じで、介助がいてもバス利用はかなり難しいだろう。
筆者が一切の介助者だが、関わっている間に転んだりして“万一”が起きたら責任重大となる。「命をつなぐ」というか、タクシーは社会的に大きな役割を担っている職業だとあらためて痛感させられた。
障害のある人への助成制度もあるが、それにつけても運賃値上げは、実車率の減少による減収だけでなく弱い立場の人たちを直撃することを忘れずにいたい。