物流危機を「宅配問題」に矮小化するテレビ報道 “メシウマ”視聴者と物流業界の広報不足が招く決定的誤解とは
なぜテレビは宅配のことばかり報じるのか?──業界関係者が抱えるこの不満には、消費者が“メシウマ”なネタを求めることと、物流業界が長年広報活動をおろそかにしてきたというふたつの課題がある。
物流への理解不足が引き起こす誤解

もうひとつ、宅配ばかりが報じられる理由には、世間一般の物流に対する理解不足がある。
筆者は物流事業者でのインターンシップのディレクションを行っているが、参加した高校生や大学生に
「君たちが知っている運送会社の名前を挙げて」
と聞いても、ヤマト運輸や佐川急便以外の名前が出ることはほとんどない。それどころか、
「君たちがコンビニで買うおにぎりも、物流がなければ君たちの手元には届かないんだよ」
と説明すると、初めて気づく生徒や学生も少なくない。このような物流への理解不足は、若者だけの問題ではない。
ある物流事業者の採用担当者が高校の進路指導部を訪ねたとき、教師から
「物流ですか。だったら、トラックドライバーの募集ですね」
といわれたことがあった。この教師は、「物流 = トラックドライバー」という考え方をしていて、
・倉庫作業員
・事務職
などが物流事業者にいることを想像できなかったのだろう。
ある小売業の部長は、世の中の荷物の大半はヤマト運輸と佐川急便が運び、その他の運送会社はこの2社の下請けだと思っていた。「日通もありますよ」と伝えると、
「もちろん例外もあるでしょう」
と返されたが、いまだにその意味がわからない。
余談だが、物流業界の関係者から
「テレビはヤマト運輸など、大手事業者のニュースしか取り上げない」
と不満を聞くことがある。これは、中小企業の取り組みがメディアに取り上げられにくいという事情もあるが、知名度が低い企業のニュースは、視聴率が取れないため報じられにくいという現実もあるのだろう。