「役目を終えた船」が環境を脅かす、って本当? 船舶の「リサイクル」が急がれるこれだけの理由
国際海事機関が採択したシップリサイクル条約は、船舶解体にともなう環境汚染や労働者の安全を確保することを目的としていて、2025年に発効する。この条約により、解体現場の環境が改善されることが期待されており、資源の有効活用も進む。船舶の寿命は約20年で、解体は主に発展途上国で行われているため、環境への影響が懸念されている。
環境配慮の時代

世界中を行き交う船は貨物輸送の要であり、国際貿易の背骨ともいえる存在だ。しかし、船にも寿命があり、役目を終えた船は解体される。近年、この解体プロセスにともなう環境問題や安全性への懸念が高まり、国際的なルールの整備が求められていた。そんななか、2009年に国際海事機関(IMO)が採択した「シップリサイクル条約」が、ついに発効することになった。この条約は、船のリサイクルに関わる問題を包括的に解決することを目指しており、今後の海運業界に大きな影響を与えるだろう。
船舶の寿命はおおよそ20年で、寿命を迎えた多くの船舶はインドやバングラデシュといった
「途上国」
で解体されている。しかし、その解体現場では労働環境が厳しく、
・環境汚染
・労働災害
が問題となってきた。こうした課題に対応するため、2009年にIMOが「シップリサイクル条約」(正式名称は「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約」)を採択した。この条約は、船舶解体における労働の安全確保や環境保全を目的とし、円滑な船舶代替や循環型経済における脱炭素化の推進にも貢献する内容だ。
同条約の発効には、
・15か国以上の批准
・批准国の合計商船船腹量が世界の商船船腹量の40%以上
・批准国の過去10年での最大年間解体船腹量が批准国の商船船腹量の3%以上
という厳しい条件があった。しかし、2023年6月26日にバングラデシュとリベリアが条約を締結したことで条件を満たし、2025年6月26日に発効することが決まった。