現在の「絹ごし豆腐」は偽物ばかり? 絹で濾してないのに! その原因はなんと「軍用機」に関係していた
かつて絹の布で濾すことからその名がついた「絹ごし豆腐」。ところが現在は、絹布で濾さない「ニセ絹ごし豆腐」が売られている。このニセ絹ごし豆腐が生まれた背景には、第2次世界大戦における軍用機の生産があった。
戦前の豆乳凝固剤はにがり

日本の豆腐は伝統的に、製塩時に生じる「にがり」を豆乳の凝固剤として使用してきた。これは、中国北部の豆腐の製法が伝わったためと考えられている。
豆乳ににがりを入れると、上澄み液と凝固した沈殿物に分かれる。この柔らかい沈殿物を
・汲(く)み豆腐
・おぼろ豆腐
というのだが、プラスチック容器のない時代では、柔らかい汲み豆腐は売りにくい。そこで汲み豆腐から水分を抜いて直方体に固めて売るのだが、脱水する際に使うのが木綿と絹の布。
直方体の木製の箱の側面に穴をたくさん開け、その穴から汲み豆腐が漏れ出さないように布袋を敷き、汲み豆腐を布袋に流し込み、落としぶたと重しを上に載せる。そうすると水分が布目と木の穴から絞り出され、固い豆腐となるのだ。
この布袋として、木綿よりきめ細かい絹を使うと、表面が滑らかで、より水分を多く含んだ柔らかい豆腐ができる。こうして作られた絹ごし豆腐は、木綿豆腐よりも「上等」な豆腐とされていた。
「絹漉は絹の袋で濾して拵へた上等の豆腐です」(服部七郎『食通の喜ぶ豆腐と玉子の珍料理』)