運賃低下の運送業界 仲介業者「ピンハネ悪玉論」で本当にいいのか

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インターネット上に散見される水屋(貨物利用運送事業)の「ピンハネ悪玉論」。しかし水屋だけが悪いのだろうか。必要なのはお互いの妥協と合意形成だ。

ネット上に集まる多くの批判

物流を支えるトラック(画像:写真AC)
物流を支えるトラック(画像:写真AC)

 運送業界では、よく

「水屋がピンハネしている」
「水屋が無理な価格設定をして、運賃の水準を下げている」

という声を聞く。いずれも運賃の低価格化への指摘だが、問題の根本は本当にそこにあるのだろうか。

 以前、本ニュースサイトで「一般人こそ知るべき物流問題 商品の価格高騰を招く「空車回送」とは何か」(2022年2月23日配信)を書いたところ、

「これだから水屋は~」

といったような批判コメントが多く書き込まれた。

 筆者(田中なお、物流ライター)は業界をふかんする身として、水屋に着目しながら、運賃の低価格化について今回の記事で考えてみたい。

「水屋」とは何か

物流センターのトラックバース(画像:写真AC)
物流センターのトラックバース(画像:写真AC)

 水屋とは「貨物利用運送事業」の通称で、具体的には、実配送を担わず荷主から実運送事業者へ仕事の仲介を行う業務だ(実配送も請け負う水屋もある)。言い換えれば、配車係や集客のアウトソーシングともいえるだろう。異業種でいえば、

・不動産仲介業
・人材紹介業

などと似た位置付けだ。

 国土交通省によると、2012(平成24)年度の実運送事業者6万2910社に対し、貨物利用運送事業者(水屋)は2万2000社。業界大手でいえばトランコム(愛知県名古屋市)を挙げる運送業者は多いだろう。同社の協力輸送会社は1万3000社にのぼる。

 水屋が仲介業であるからには、もちろん仲介料が発生する。なぜなら、荷主とのコミュニケーションや集客を担う手数料を取らなければならないからだ。

 前述のように「水屋がピンハネしている」といわれるのにも関わらず、水屋の市場規模がこれだけ大きいのはなぜか。それにはきちんとした理由がある。

 特に長距離の幹線輸送では、なるべく無駄のない配送ルートを組もうと考えたとき、運送会社の人脈を使って帰り荷を探すことも多い。このようなときに人脈の少ない中小零細企業は、大きなネットワークを有した水屋に頼らざるえないのだ。

 さらに水屋のプラットホームが大きいほど、求貨・求車情報がその中で集まり、価格競争が起こる。そのため価格交渉力を持たない中小零細企業は、安い運賃でも仕事を請けてしまい運賃が低価格化してしまう。

 確かにたったの電話1本でリスクを追わず手数料を取り、さらには荷主の顔を立てるために運賃を低迷させているというドライバーからの不満はもっともだ。しかし、運賃の低価格化の責任は本当に水屋だけにあるのだろうか。

 こういった問題は片方だけを糾弾しても解決しない。業界構造がこのようになっている以上、必要なのはお互いの妥協と合意形成だ。