運賃低下の運送業界 仲介業者「ピンハネ悪玉論」で本当にいいのか

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インターネット上に散見される水屋(貨物利用運送事業)の「ピンハネ悪玉論」。しかし水屋だけが悪いのだろうか。必要なのはお互いの妥協と合意形成だ。

中小零細に求められる付加価値

需要と供給のイメージ(画像:写真AC)
需要と供給のイメージ(画像:写真AC)

 そもそも低価格帯で、仕事を獲得する層がいるのは物流業界に限った話ではない。低価格でサービスを買いたい人がいれば、低価格を売りに商売をする業者もいる。

 他者がいくら「業界基準を上げていこう」と声を上げたところで、この構図は避けようがない。低価格を売りに仕事が成り立っているのであれば、それもまた競合との戦い方のひとつといえるからだ。

 では、低価格で競合と競うほかにやり方はないのだろうか。

 運賃の低価格化ばかりにスポットが当てられがちだが、運送業に付加価値をつけて、正当な運賃で仕事を請け負っている会社も、もちろんある。「大手だから」「コネクションがあるから」という声が聞こえてきそうだが、なぜ大手が大手たるかを考えてほしい。開業当初から大手の会社は、そうないだろう。

例えば、以下のような付加価値が考えられる。

・◯◯専門とうたって売り出す
・付帯作業を率先して請け負う

市場を見渡してみれば、他社が積極的に請けない穴場の仕事は割とある。

・面倒な作業
・リスクのある商品の取り扱い
・専門的な付随作業を必要とする案件

 具体的には、精密機器や高額商品の取り扱い、荷下ろし先が何らかの問題を抱えている現場など。これらの仕事を断る運送業者は多い。理由は「やったことがない」「大変」といったところだ。

 その中でただ断るのでなく、必要な分の料金を上積みし、配送を請けてくれる業者は荷主にとって、とても貴重な存在だ。他の業者ができない仕事であれば、荷主からすれば依存せざるえなくなる。

 唯一無二の存在になれば下請けではなく、逃げられては困る大切なパートナーに変わる。すると、おのずと価格帯が上がるのは想像できるだろう。要はマーケティングやブランディングに関わる部分である。

 とはいえ、こうした戦略的な部分をいち従業員がコントロールするのは困難だろう。目の前の仕事をただこなしていくだけではなく、経営層がしっかりと

・顧客選び
・競合との戦い方

を考えていく必要がある。そういった意味では、ドライバーの幸福度は会社選びに大きく左右されるともいえるかもしれない。

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