なぜ「一人旅」は旅館で歓迎されなかったのか? かつては想像できない“恐怖”のイメージも…… SNS話題のネタを深掘りする

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宮城県の「温湯温泉 佐藤旅館」が一人旅の受け入れを積極的に発表し、SNSで2万5000の「いいね!」を集めた。かつては一人客が敬遠されたが、近年は受け入れ態勢が整っている。この流れは宿泊業界の変革を示唆している。

一人旅増加の推移と実態

旅館のイメージ(画像:写真AC)
旅館のイメージ(画像:写真AC)

 1990年代に一人旅がブームになったものの、急速に増加したわけではない。

 日本観光振興協会が毎年発行している『観光の実態と志向』には「同行者人数」という項目があり、一人旅の増減を追跡できる。ここで、特定の年代に絞った数字を示してみよう(データは宿泊旅行に基づいている)。

●1997年
・自分ひとり:2.4%
・家族:37.3%
・友人・知人:29.6%
・家族と友人・知人:14.0%
・職場・学校の団体:8.9%
・地域の団体:3.2%

●2009年
・自分ひとり:5.4%
・家族:46.0%
・友人・知人:24.9%
・家族と友人・知人:12.5%
・職場・学校の団体:4.0%
・地域の団体:3.2%

●2014年
・自分ひとり:11.7%
・家族:55.2%
・友人・知人:23.5%
・家族と友人・知人:4.5%
・職場・学校の団体:1.7%
・地域の団体:0.8%

●2022年
・自分ひとり:17.7%
・家族:55.8%
・友人・知人:19.6%
・家族と友人・知人:2.9%
・職場・学校の団体:1.2%
・地域の団体:0.3%

 1990年代に一人旅がブームとなったものの、現在の二桁台に比べるとかなり少数派だった。国土交通省によると、20代の1回あたりの旅行の平均費用は1986(昭和61)年には約4.5万円だったが、バブル崩壊後の1998(平成10)年には

「約3.3万円」(27%減)

にまで落ち込んでいる。ブームとはいえ、そもそも旅行に出掛ける人自体が減っていたのだ。

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