なぜ「一人旅」は旅館で歓迎されなかったのか? かつては想像できない“恐怖”のイメージも…… SNS話題のネタを深掘りする

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宮城県の「温湯温泉 佐藤旅館」が一人旅の受け入れを積極的に発表し、SNSで2万5000の「いいね!」を集めた。かつては一人客が敬遠されたが、近年は受け入れ態勢が整っている。この流れは宿泊業界の変革を示唆している。

一人旅拒否の理由

旅館のイメージ(画像:写真AC)
旅館のイメージ(画像:写真AC)

 かつて宿泊施設は一人客を拒否する姿勢が強かった。『読売新聞』1988年8月4日付朝刊に掲載された記事「難しくない一人旅」では、次のような体験談が紹介されている。

・京都への女ひとり旅。1カ月前に旅館や民宿案内所に頼んだが、「満員」とか、「女ひとりでは」と断られた(女性50歳)
・山陰地方のある市では、十軒のホテル、旅館に門前払いをくわされ、夜行で帰るはめになった(男性69歳)

 なぜ一人客がそんなに敬遠されていたのか。同新聞1989年7月26日付夕刊に掲載された「泊めてくれない一人客 紹介者の口利きならOKの場合も」では、次のように説明されている。

「旅館側に聞くと、断る最大の理由は手間がかかるからだと言います。一人客も二人の場合もかかる手間はそれほど変わらない。それなら二人以上を優先した方が、という経営効率上の理由が本音なのでしょう。「言いにくいが、一人客は問題が起きる率が高い」という旅館側の理由もあるようです」

 ただ、経営効率だけが理由ではなかったようだ。『北海道新聞』1994年2月14日付朝刊に掲載された記事「1人旅でも歓迎します 不況で旅館が“方針転換” でも…腰重い道内の大手」では、ある旅館が本音を語っている。

「ある旅館は「一人の女性は自殺など、何をするかわからないという考えが少し前まであった」といい、女性には特に厳しかったようだ」

 一人旅が自殺や問題を抱えた客と結びつけられるイメージは、フィクションでもよく見られる。このような偏見が、かつての宿泊施設で一人旅行者の受け入れをちゅうちょさせる要因となっていた。

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