なぜ「一人旅」は旅館で歓迎されなかったのか? かつては想像できない“恐怖”のイメージも…… SNS話題のネタを深掘りする

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宮城県の「温湯温泉 佐藤旅館」が一人旅の受け入れを積極的に発表し、SNSで2万5000の「いいね!」を集めた。かつては一人客が敬遠されたが、近年は受け入れ態勢が整っている。この流れは宿泊業界の変革を示唆している。

中高年のユース利用増加

ユースホステルのイメージ(画像:写真AC)
ユースホステルのイメージ(画像:写真AC)

 この時期、中高年層のユースホステル利用が増えているという記事もよく見かける。

「本来、若者の宿泊施設であるユースホステルを利用する中高年が増えている。ユースホステルは料金が安いうえに年齢制限がないので、会員になればだれでも泊まれる。若者との会話を楽しみにしている人が多いという」(『読売新聞』1993年3月6日付朝刊)

 この頃、以前は一人客を敬遠していた温泉旅館でも、受け入れるところが増えてきたという記事が多く見られるようになった。『毎日新聞』1994年12月8日付夕刊に掲載された記事「独り者は大事なお客、薄利多売で不況に活路 サービス、よりきめ細かく…」では、当時の状況がよくわかる。

 この記事では、デパートの食品売り場でナスの煮物が1本から買えるようになるなど、シングル向けのサービスが目立つようになっていることを紹介し、その一例として温泉旅館の変化も取り上げている。

「ウエルカムになってきたのは、個人旅行が増えたほか、旅館の過剰設備投資も背景にある。空き部屋にしておくより、一人でも客を取りたい、というわけだ」

 バブル崩壊後の不況が続くなか、宿泊客が減少した旅館は、ようやく一人客を受け入れるようになったのである。

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