東海道新幹線の圧倒的な収益力と成長戦略【短期連載】リニアはさておき(2)
東海道新幹線が支える鉄道収益
リニア中央新幹線の静岡工区をめぐる政治的な論争や、「国商」「最後のフィクサー」と呼ばれた名誉会長・葛西敬之氏(2022年没)などの影響もあり、JR東海は多くの人にとって複雑なイメージを抱かせる存在かもしれない。しかし、一般の人たちが本当に知りたいのは、創業以来の長い歴史に刻まれた、同社の鉄道事業の成功と未来への壮大なビジョンではないか。本連載「リニアはさておき」では、創業から現在に至るまでの歴史を掘り下げ、鉄道事業の神髄を探っていく。
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先日の保守用車の脱線事故で大動脈の重要性を痛感したように、やはり東海道新幹線のイメージが強い会社だろう。そこで、今回はJR東海の鉄道事業に改めてスポットを当ててみたい。
第1回となる連載記事で、JR東海の単体営業収益のうち
「88%」
を東海道新幹線が稼いでいることがわかったが、ここでは鉄道事業の旅客運輸収入の推移を見てみよう。
ズバリ「新幹線の会社」
鉄道事業の旅客運輸収入の推移は次のとおりである。
●1987(昭和62)年度
・新幹線:7145億円
・在来線:1107億円
・小荷物:2億円
・合計:8255億円
●1990(平成2)年度
・新幹線:9251億円
・在来線:1227億円
・小荷物:2億円
・合計:1兆481億円
●2018年度
・新幹線:1兆2918億円
・在来線:1048億円
・小荷物:0億円
・合計:1兆3966億円
●2020年度
・新幹線:4173億円
・在来線:588億円
・小荷物:0億円
・合計:4761億円
●2023年度
・新幹線:1兆2479億円
・在来線:948億円
・小荷物:0億円
・合計:1兆3428億円
JR発足初年度は、新幹線の運輸収入は7145億円であったが、東海道新幹線の積極的な営業戦略が功を奏し、ピークの2018年度にはJR発足時の
「1.8倍」
となる1兆2918億円を記録した。コロナ禍により大幅に減少したものの、2023年度はほぼほぼ回復したといっていい。
在来線は、1992年度の1315億円をピークに減少し続けている。在来線の定期旅客収入は、JR発足初年度の242億円に対し、2023年度は1.3倍の「312億円」と良好であったが、
「定期外の運輸収入」
が縮小しており、トータルでは減少の一途をたどってきた。旅客運輸収入における新幹線の割合を計算すると、
・1987年度:86.6%
・2018年度:92.5%
・2023年度:92.9%
となっており、在来線の旅客収入の減少傾向も相まって、JR発足当初より新幹線の占める割合が高くなっている。ますます“新幹線の会社”になってきたといえよう。