東海道新幹線の圧倒的な収益力と成長戦略【短期連載】リニアはさておき(2)

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JR東海は、東海道新幹線で収益の88%を稼ぎ出す一方、在来線は減少傾向に。1992年の300系導入から速度向上を進め、リニア中央新幹線の建設も進行中。

在来線を新幹線ネットワークの一部化

飯田線秘境駅号(画像:写真AC)
飯田線秘境駅号(画像:写真AC)

 東海道新幹線の圧倒的な運輸収入により、JR他社と比較して

「在来線の影が非常に薄い」

といえなくもない。とはいえ、経営理念のなかで在来線を関連事業とともに社会基盤と位置付け、維持・発展に貢献するとしている。在来線の戦略は大きく分けて、

・名古屋圏を中心とした輸送改善
・新幹線を生かしたネットワークの形成
・観光需要の喚起

が挙げられる。

 名古屋圏を中心とした輸送改善では、1987(昭和62)年の会社発足からわずか2年後の1989年に新快速を登場させた。新快速といえば、関西圏の東海道・山陽本線で私鉄を迎え撃つ刺客として登場したイメージがあるが、名古屋圏においても名鉄と熱いバトルを繰り広げてきた。このほか、1999(平成11)年のJRセントラルタワーズ開業に合わせた輸送改善、武豊線電化などがある。

 JR東海は、新幹線と在来線特急もしくは快速を組み合わせたネットワークも充実してきた。国鉄時代から続く特急しなの、ひだ、南紀のほか、JR発足後に登場した特急ふじかわ、伊那路、名古屋と伊勢を結ぶ快速みえがある。

 なお、1989年に気動車特急85系を、1994年には381系に代わる新たな電車特急383系を、JR発足後早い時期に投入した。今では気動車特急はHC85系へ、電車特急は2026年から385系と次の世代に受け継がれる。2024年になってやっと381系やくもが引退したJR西日本とは隔世の感がある。

 観光需要の喚起では、急行「飯田線秘境駅号」がユニークだ。飯田線秘境駅号は、2010年に運行開始し、今でも人気を維持している。このほか、一時期であるが特急あさぎりを小田急電鉄と相互直通運転していた(現在は、小田急電鉄の乗り入れによる特急ふじさんのみ)。

 運輸収入的には、影の薄い在来線ではあるが、東海道新幹線が生み出す豊富な資金力を生かして、常にブラッシュアップしてきたといえよう。

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