東海道新幹線の圧倒的な収益力と成長戦略【短期連載】リニアはさておき(2)
JR東海は、東海道新幹線で収益の88%を稼ぎ出す一方、在来線は減少傾向に。1992年の300系導入から速度向上を進め、リニア中央新幹線の建設も進行中。
一元経営を勝ち取った中央新幹線

最後に、リニアによる中央新幹線の経緯や概要について触れておこう。
JR東海発足時、中央新幹線は全国新幹線整備法における
「計画路線」
にすぎず、どこの組織が建設主体や運営主体となるのか決まっていなかった。
このため、JR東海は、東海道・中央新幹線の一元経営の実現を重要な経営課題のひとつに据えざるを得なかった。東海道新幹線を二重系化する意味ではJR東海による一元化が妥当だと思われるものの、当時は
・中央政界
・運輸省
・他のJRや関係機関
の思惑が入り乱れていた。そのようななか、東海道・中央新幹線の一元経営を勝ち取ったのは、ある時は大胆に、またある時は慎重に進めてきたJR東海の努力のたまものともいえよう。
その結果、2011(平成23)年5月に国土交通大臣より東京都・大阪市間の営業主体・建設主体の指名および建設の指示を、2014年10月には国土交通大臣から品川・名古屋間の工事実施計画の認可を受けて現在に至っている。
リニアによる中央新幹線は、設計最高速度505km/hで、東京都と大阪市を約1時間で結ぶ。時間短縮効果により、
「航空機から中央新幹線への需要転移」
が見込まれるとともに、三大都市圏が一体となった巨大都市圏(スーパー・メガリージョン)が生まれて、経済・社会活動が活性化すると考えられている。
東京都・大阪市間の建設に要する費用の概算額は約9兆円で、2017年7月には鉄道建設・運輸施設整備支援機構により財政投融資を活用した総額3兆円の長期借り入れを完了した。これにより、金利上昇や資金調達リスクを低減し、健全経営と安定配当を堅持しながら建設を進められる。
JR東海の鉄道事業はこのあたりでいったん筆を置いて、次回は関連事業を取り上げる。