物流存続に不可欠な“痛みをともなう”大変革の行方【短期連載】フィジカルインターネットの課題を考える(3)
- キーワード :
- 物流, 人手不足, コスト, フィジカルインターネット
フィジカルインターネットの議論は始まったばかりだ。旧来の物流システムを革新するがゆえに、否定意見も噴出するだろう。第3話となる本稿では、それでもフィジカルインターネットを実現すべき理由を考える。
企業にとって“生き残り”を賭けた踏み絵
冒頭、運送会社の大半が赤字であることを指摘した。原因の一つは、運送業界が中小企業の集合体であり、経営基盤が弱いことにある。
国内には、約6万2000社の運送会社があるが、71.6%が従業員が20人以下であり、従業員が1000人を超えるのはわずか68社、割合にして0.1%しかない。
運送事業が赤字化する原因は、企業個別に見ればさまざまな原因がある。だが、大局的に見れば、運送業界の構造に課題があることは明白だ。個々の企業における自助努力には限界があり、業界の仕組みを変えなければ、運送業界の赤字体質は改善できない。
フィジカルインターネットに参画することによって、安定的かつ継続的に仕事を得ることができるようになれば、運送会社の収益は大きく改善するだろう。これは、倉庫会社も同様だ。
ただし、安定した収益を得るためには、運賃や保管料、荷役料などに対し、標準料金を策定する必要がある。
規制緩和による過当競争は、「今日は仕事がないから、通常10万円の輸送を5万円で引き受けます!」などというダンピングを生んだ。フィジカルインターネットでは、同じ轍を踏んではならない。
別の見方もできる。
良くも悪くも、フィジカルインターネットは物流企業にとって生き残りをかけた踏み絵となる可能性がある。