トラックドライバーの幸福感、「物流の2024年問題」や自動運転で二極化へ【短期連載】どうなる?これからのトラックドライバー(3)
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混迷を極める物流業界

もはや社会課題となったトラックドライバー不足は、未だ解決の道が見えず、2027年には27万人の不足、2030年には物流需要の約36%が輸送不可能な状況に陥るという試算もある。
突如降って湧いたように、フィジカルインターネットという言葉も登場した。フィジカルインターネットとは、物流に関わるすべてのリソース(トラック等の輸送機器や倉庫など)をリアルタイムにオープンシェアリングし、また貨物に標準化されたケース(貨物のサイズに合わせて複数の規格が用意される)を採用することで、高度に効率化した共同輸送を実現しようという理論である。
フィジカルインターネットが実現すれば、貨物は常に、そのとき考え得る最も効率的な輸送手段と経路をたどり、運ばれることになる。その様子が、あたかもインターネットにおける通信ネットワークに似ていることから、フィジカル(物理的な)インターネットという名前が与えられた。
なお日本においては、フィジカルインターネットを主導するのは経済産業省だという。これまで物流政策を担当してきた国土交通省は、蚊帳の外に置かれた形だ。これは取りも直さず、物流革命が今後の経済発展に欠かせないと国が示したことになる。
「物流の2024年問題」も悩ましい。「物流の2024年問題」とは、働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降、トラックドライバーに対する年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する諸問題に対する総称である。
筆者の試算だが、現在でも最低2割の運送会社が、960時間の年間時間外労働時間の制限をクリアできていないと考えられる。2024年4月以降、年間時間外労働時間の上限が発動されれば、トラック輸送のリソースが減少し、製品を作っても運べない“物流難民”が生まれる可能性もある。
赤字にあえぐ運送ビジネス
そもそも現状でも、多くの運送会社は、運送ビジネスで儲けることができていない。
全日本トラック協会によれば、2019年度決算の貨物運送事業において、営業損益段階での黒字事業者は37%、経常損益段階での黒字事業者は45%しかいない。統計全体での、経常利益率は、マイナス0.2%だ。
これは、2019年度だけの話ではない。統計全体を見れば、2014年度の経常利益率はマイナス0.2%。以降、2015年度プラス0.2%、2016年度プラス0.9%、2017年度プラス0.6%、2018年度プラス0.9%と、やや持ち直してきたのだが、ここに来て再び赤字に転落した。
今後の見通しも暗い。2020年度、20201年度は、新型コロナウイルスの影響で、貨物量が低迷した。加えて「物流の20204年問題」は、労働集約型産業である運送ビジネスにおいて、売上の原資たるドライバーの労働時間を制限する。当然、売上も下がるだろう。
「よりたくさん、より遠く」へ運ぶほど儲かる――運送ビジネスの基本構造は、根本的に見直されなければならない。それに伴い今後のドライバーに求められる要素も、変わってくるだろう。
このような、混迷を極める現在の物流業界において求められるトラックドライバーの素養とは、どういうものなのだろうか。