東京で全然見かけなくなった「シアトルズベストコーヒー」が、九州に今でもやたらと多いワケ【連載】移動と文化の交差点(6)
シアトルズベストコーヒーは、九州で急成長中。福岡を中心に、交通利便性の高い駅構内で展開し、地域経済にも貢献している。
フランチャイズ企業の挑戦と失敗

こうしてみると、コーヒーチェーンの創業店舗が聖地化している現実も、広義のコンテンツツーリズムと見ることができる。
コンテンツツーリズムとは、コンテンツ(今回ならコーヒー店)の舞台である土地を訪れる観光行動の総称であり、創業者の哲学や思想、感性に触れることができる場所の体験である。一種の“ファンダム”とも解釈できる(筆者はコンテンツツーリズム学会の会長を務めている)。
日本におけるシアトルズベストコーヒーは、複数のフランチャイズ企業によって運営されている。1999年に東京・渋谷にオープン。三井物産系のボウリング場運営会社・日本ブランズウィックが経営していた。
しかし、2007年のピーク時には日本全国に70近い店舗があったが、2008年、当時最大手だったフランチャイズ企業が倒産すると、大半の店舗が閉鎖、もしくは営業停止に追い込まれた。
2010年代に入ると、フランチャイズ企業のブランドパートナーズが、シアトルズベストコーヒーの姉妹ブランドでもあるシナモンロール専門店「シナボン」、バー&レストラン「バション」との複合業態で首都圏に出店を開始した。しかし、現在同社はコーヒー事業から撤退している。