中国EV企業の果てなき野心! 東南アジア市場 支配のカギ「5000kmの充電回廊」とは何か? 産業構造の大転換はもう始まっている
ASEANの2025年GDP成長予測は平均4.6%、フィリピン6.1%など高い伸び。中国メーカーは東南アジアの市場シェアを75%に拡大、現地生産や充電インフラ整備で攻勢を強める。EVの普及と新インフラ「グリーン充電回廊」が自動車産業を再編、世界のパワーバランスも揺るがす。
世界経済構造の大転換
欧米市場では、中国EVに対する警戒感が高まっている。欧州連合(EU)は、7月5日より中国EVに最大37.6%の暫定関税を課すことを発表した。これは通常の10%の輸入関税に上乗せされるもので、中国メーカーにとって大きな障壁となっている。
中国EVは、今後、欧米よりもさらに大きな市場となる新興国でのシェア拡大を目指し、南米市場への進出を進めている。ブラジルでは中国メーカーの販売台数が急増しており、BYDはサンパウロ州に工場建設を計画するなど、新たな成長市場を積極的に開拓している。
この動きは、既存の自動車メーカーの存続基盤を揺るがすことになるだろう。自動車産業の重心が東アジアに移り、欧州、米国、日本のメーカーはかつての携帯電話産業のように主導権を喪失する可能性がある。
今後、EVの普及により石油依存からの脱却が加速し、エネルギー産業に支えられた世界のパワーバランスが変化していく。同時に、従来の自動車産業(そして多くの産業)で培われた技術や職業は急速に陳腐化し、新たな技術や職業への転換が急務となる。この産業構造の変化は、国家間の経済力のバランスを大きく変える可能性を秘めている。
現在、東南アジアの自動車産業で起きている変革は、世界の未来を映し出している。中国EV企業の躍進は、世界的な産業構造の大転換の始まりにすぎない。東南アジアでのこの変革は、自動車産業にとどまらない世界経済の構造変化の前兆であり、その波及効果を引き続き注視する必要がある。