中国EV企業の果てなき野心! 東南アジア市場 支配のカギ「5000kmの充電回廊」とは何か? 産業構造の大転換はもう始まっている

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ASEANの2025年GDP成長予測は平均4.6%、フィリピン6.1%など高い伸び。中国メーカーは東南アジアの市場シェアを75%に拡大、現地生産や充電インフラ整備で攻勢を強める。EVの普及と新インフラ「グリーン充電回廊」が自動車産業を再編、世界のパワーバランスも揺るがす。

5000kmの「EVショールーム」

重慶市の位置(画像:OpenStreetMap)
重慶市の位置(画像:OpenStreetMap)

 グリーン充電回廊構想の進展の面白い点は、単に物を運ぶための道路を作るだけではないことだ。EVの充電設備や関連施設も一緒に整備し、

「沿線全体の経済発展」

を目指している。つまり、EVとその関連産業を軸にした、新しい形の経済圏を作ろうというのだ。前述の重慶市政協委員の周氏はこの構想について、次のように語っている。

「われわれは、充電ステーションと充電杭の建設、関連データ、標準化において、東南アジア諸国とのコミュニケーションと協力を強化することができ、その後、鉄道、海運、その他の輸送手段との相乗効果が形成され、中国と東南アジア間の輸出入を促進することができる5000kmのグリーン充電回廊を形成することができる」

 つまり、このグリーン充電回廊は“単なる道路”ではない。5000kmにも及ぶ巨大な

「EVショールーム」

と考えるとわかりやすいだろう。中国から東南アジアへと続くこの道路には、ところどころに最新の充電設備が設置され、その周辺にはEV関連の工場や研究施設が立ち並ぶ可能性がある。

 この構想が実現すれば、中国のEV企業は自社の最新EVを実際に走らせながら、東南アジア全域に自社の製品、技術、そしてブランドをアピールできるのだ。まさに、

「走る広告塔」

ともいえる。これこそが、東南アジアが中国EV企業にとって主戦場となる最大の理由なのだ。

 この動きは、世界の自動車産業の勢力図を根本から塗り替える可能性を秘めている。グリーン充電回廊構想に代表される包括的インフラ整備は、

・輸出による「市場シェアの獲得」
・現地生産への移行による「市場浸透」

に続く最終段階でといえる。この戦略の成功は、世界の自動車産業に激震をもたらすかもしれない。成長著しい東南アジアでの成功を足がかりに、中国EV企業は急速にグローバル市場での存在感を高めていく。彼らにとって東南アジアは、グローバル展開のための

「実験場」

なのだ。

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