自動車ディーラーこそ、過疎地域での「カーシェア事業」を主体的に行うべきではないか?【リレー連載】やるぜ、能登復興。(2)
ディーラー版カーシェアの提案

都市部では電車やバスなどの公共交通が発達しているが、地方に行けば行くほど不便になる。であれば、カーライフを提供するディーラーがこのインフラを担うことはできないのだろうか。
能登半島地震でクルマが壊れた人は少なからずいるはずだ。そんな人たちに、ディーラーの試乗車や顧客からの下取り車をカーシェアとして貸し出すというのはどうだろう。いわゆる「個人間カーシェア」のディーラー版である。
もちろん、走行距離の増加や破損などのリスクはあるが、将来的にカーシェア利用者がクルマを購入する顧客にランクアップする可能性は大いにある。それが新車であれ中古車であれ、ディーラーは貸し出すことで新たな収益を得られる。
しかし、この事業を行うには
・カーシェア用のクルマを確保
・カーシェア利用者への配慮
という、ふたつの問題が生じる。
多くのディーラーでは、試乗車や中古車のラインアップは必要最小限である。特に中古車は、下取り車がないために用意できないこともあるが、カーシェア用のクルマを仕入れることができれば、この問題は解決する。
また、利用者にとってのもうひとつの懸念は、クルマを借りるためディーラーまでどうやって行くかということだ。その解決策がクルマのデリバリーだ。ディーラーに行くためのクルマがない人にとっては、自宅や最寄りの場所までクルマを持ってきてもらった方が便利だろう。
この場合、ディーラースタッフの人件費がかかるが、かつてはディーラーが整備のためにクルマを引き取り、納車していたのだから、不可能ではないだろう。無料で提供するのは難しいかもしれないが、有料にすれば人件費はペイできる。
社会貢献の一環にもなるし、ディーラーにとっても採算の取れるよい事業になるのではないか。
顧客条件で間口拡大

一部の地域では、日本型ライドシェアと呼ばれる事業が展開されている。現在はタクシー会社が主体となっているが、筆者(宇野源一、元自動車ディーラー)はどう考えても不便だと思う。
まず、労働者の問題がある。表向きは副業を促進するための制度だが、本業との兼ね合いで週40時間しか働けないのでは、事業が発展しない。この問題を解決するために、カーライフを提供する自動車ディーラーが運営主体となってライドシェアを実現するのはどうだろうか。
例えば、「ディーラーの顧客」であることを参加条件とする。現在のライドシェアは自動ブレーキがついたクルマであることなど細かい条件があるが、ディーラーで整備されたクルマであれば、新旧を問わずOKということになれば、間口は広がるだろう。
ディーラーは1店舗あたり数百人の利用者を抱えているので、これを増やすために営業マンがドライバーを増やすことで収益の源を作れるはずだ。ライドシェア事業には車両のメンテナンスが必要なので、ドライバーに定期的にディーラーに入庫してもらうことで、メンテナンス費用を稼ぐことができる。また、過走行などで傷んだクルマを信頼できるディーラーでメンテナンスしてもらえるため、一定の安心感を得ることができる。場合によっては、クルマの販売にもつながるかもしれない。
高齢でクルマを所有・運転できない人には、ライドシェアで移動ができ、ディーラーの顧客は空き時間を利用して小遣い稼ぎができる。このようなソリューションを提供できるディーラーは、売り上げを伸ばすことができ、地域社会という名の社会貢献もできる。
まさに「三方よし」の状況だろう。