「高齢者の孤独死」年間6.8万人の衝撃! そうなりたくなければ、「公共交通」にもっと関心を持つべきだ
高齢者への投資必須

こうした課題の克服に欠かせないのが、テクノロジーの活用であろう。例えば、デマンド交通への人工知能(AI)の導入は進んでいる。
岡山県の中央部に位置する久米南町ではAIを用いた効率的な運行が行われている。同町では2016年からオンデマンド交通「カッピーのりあい号」の運行を開始したが、利用効率の低さが課題となっていた。
そこで2020年、AIを活用した新たな配車システムを導入、時刻や運行ルートの制約を撤廃し、町内どこでも自由に乗降できる利便性の高いサービスを実現した。この結果、年間利用者数は2019年の8400人から2020年は1万1800人へと1.4倍に増加。さらに、利用者の時間帯別分散にも成功し、車両数を6台から5台に削減し、約600万円の経費削減を達成している。
加えて、町内の飲食店の宅配サービスとの「貨客混載」も実現するなど、地域の利便性向上にも寄与している。大阪府河内長野市でも、2019年12月からAI運行バスが導入されている。同町では高齢化が進むニュータウンにおいて、住民の新たな足として機能しており「すぐに来てくれる」「荷物を持つ必要がない」と好評だ。
AIによる効率化のほか、自動運転の実用化も進んでいる。こうした、テクノロジーによって、先の国土交通省の報告書に挙げられた課題は次第に解決されていくことになるだろう。
モビリティの充実は、高齢者の社会参加を促し、孤立を防ぐためのインフラ整備である。しかし、これらは高齢者だけを対象とした福祉としてのみ存在するわけではない。さまざまなテクノロジーを導入して問題を解決することは、さまざまな分野での技術発展の契機ともなるはずだ。だからこそ「老人への投資」をやめてはいけない。
年間約6万8000人――。高齢者を孤独死させたくない、あるいは私たち自身が孤独死したくないのであれば、ひとりひとりが公共交通にもっと関心を持たなければならない。今こそ、そのときである。