「木を見て森を見ず」 バスドライバー不足で「給料上げろ」ばかりを騒ぎ立てる有識者の功罪【連載】ホンネだらけの公共交通論(7)
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バスドライバー不足をめぐる議論では、とにかく給料を上げるべきだという有識者もいる。物事はそんなに単純ではないし、ひとつの分野の知識だけで議論すべきではないのだ。
路線バス業界における成果

こうしたなか、国土交通省の「2022年版交通政策白書」によると、2020年度には99.6%もの乗り合いバス事業者が赤字になっている。こうした多くの事業者の経営難を前に、有識者からは、
「とにかく、心身ともに大きな拘束を受けているバスドライバーの給料を上げるべきだ」
という声がよく聞かれる。筆者(西山敏樹、都市工学者)も当媒体や多くのテレビ番組、新聞出演で、交通税などの財源に触れて、バスドライバーの給料を上げるべきだといい続けてきた。
多くの有識者は、財源や既存予算の代替案について言及することなく、バスドライバーの給料を引き上げるべきだと主張しており、多くの生活者がこの点だけに注目して支持的なコメントを出していることも気になる。
実際、広島バス(広島市)のように基本給を引き上げた会社もあれば、富山地方鉄道(富山市)のように4月末までに採用するバスドライバーの支度金を30万円から100万円に引き上げ始めた会社もある。
また、千葉県市原市のように、同地域の新規採用バスドライバーに10万円を支給する自治体も出てきた。市原市はドライバー30人分の予算を組み、3年間働き続ければさらに20万円を支給すると発表している。