「木を見て森を見ず」 バスドライバー不足で「給料上げろ」ばかりを騒ぎ立てる有識者の功罪【連載】ホンネだらけの公共交通論(7)

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バスドライバー不足をめぐる議論では、とにかく給料を上げるべきだという有識者もいる。物事はそんなに単純ではないし、ひとつの分野の知識だけで議論すべきではないのだ。

バスドライバー確保の新たな展望

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 有識者たちは「とにかく給料を上げるべきだ」といい続けてきた結果、それが前述のような社会的変化をもたらしたことは確かであり、大きな成果だ。功罪の「功」である。

 しかし、多くのバス事業者や地方自治体が財源確保に苦慮している現実は変わらない。バスドライバー不足問題で社会に出てくる有識者のなかで、

・零細路線における3ナンバーおよび5ナンバー車両の有効活用策
・SDGs時代を見据え、自動性が高く操作性に優れた電動バスを導入することで、ユニバーサルデザインとエコデザインを同時に実現するとともに、ベテランドライバーの雇用を大幅に拡大し、新たなパートタイムドライバーを確保する策

など、車両の工夫によってドライバーを確保するという策には誰も触れていない。

 また、バリアフリー運賃を援用し、交通税でバスドライバーを確保する策を提案する有識者もまずいない。さらに、

・移動の権利
・基本的人権の平等

など、公平な移動を確保することを社会の常識とする策も、法律の専門家以外には見当たらない。都市交通を考える上で基本中の基本である人口動態に基づいた議論もほとんどない。2024年問題は、

・経済
・法律
・人口論
・車両技術
・地域計画

を横串しにして、科学横断型に検討されなければならない。単一の専門分野に基づいた議論では、

「木を見て森を見ず」

で終わってしまうだろう。功罪の「罪」である。

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