イラストレーター「わたせせいぞう」が描いてきた昭和~令和という時代、対象はクルマから鉄道へ その魅力とは【連載】移動と文化の交差点(4)

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バブル期に一世を風靡したイラストレーター・わたせせいぞう。その魅力をモビリティを通して振り返る。

時代の変遷とイラストの長寿

わたせせいぞうのイラストが見られる「大人の休日倶楽部」のウェブサイト(画像:JR東日本)
わたせせいぞうのイラストが見られる「大人の休日倶楽部」のウェブサイト(画像:JR東日本)

 当時を振り返ると、1976年に創刊されたマガジンハウスの雑誌『POPEYE』は、米国のライフスタイルを日本に紹介し、当初は若者の風俗をリードして社会に大きな影響を与えた。ポップスの世界でも、いわゆる西海岸のアーティストを支持する若者に支持された。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」のリリースは1977年だった。

 若者の間に米国へのまぎれもない憧れがまん延していた時代である。『ハートカクテル』の頃に流行した日本のシティポップも、米国のポップスの影響を強く受けている。

 現在、日本人は洋画より邦画、洋楽より邦楽を選ぶようになり、全体的に海外への憧れが少なくなった。バブル期を境にして、内向き志向が強くなったのかもしれない。

 わたせは息の長い作家である。これはクリエーティブな分野ではなかなか難しいことだ。第一線で活躍し続けるには、時代の変化の波を読み、泳ぎ切る力が必要だ。40年を超える長いキャリアを支えてきたのは、描き続ける姿勢と独自の世界観だ。

 現在も連載を続け、前述のように企業のプロモーションに登場するなど、イラストの人気は衰えない。門司(北九州)、東京、大阪にギャラリーを構え、各地の美術館やイベントホールで定期的に個展を開催している。

「大人の休日倶楽部」とのタイアップ企画のメインは、車ではなく公共交通の鉄道である。筆者の世代は、心の片隅で懐かしさを感じながら、JRの駅で彼のポスターに出会い続けているのだろう。もちろん作中の主人公たちも、いまや50代以上である。

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