元中級幹部自衛官の私が、日本の「ウクライナ軍事支援」に断固反対する3つの理由 背後にちらつく“武器輸出解禁”という口実とは

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ウクライナを救うために、日本も米国や欧州のように武器弾薬を援助すべきだという意見がある。防衛、外交、安全保障に携わる人々はそれを推進しているが、まったく相手にされていない。なぜか。

ウクライナを利用する武器輸出解禁論

かつてのキーウの街並み(画像:写真AC)
かつてのキーウの街並み(画像:写真AC)

 第3は、武器輸出解禁の口実だからである。

 援助論はウクライナ救援を前に出している。

「ウクライナの自由と民主主義を守る」
「力による現状変更を認めない」
「侵略者ロシアに懲罰を与える」

ために武器弾薬を送る内容である。

 その背後には武器輸出解禁との連携もある。援助論は“なし崩し”による解禁を狙っている。

 日本は武器輸出には手を出さない決まりである。戦後日本は平和主義の理念から武器輸出を絞り続けてきた。昭和1976(昭和51)年には「武器輸出三原則」で事実上、やらないと決めた。以降は国禁とのコンセンサスが形成されている。

 これに不満を持つ保守政治や防衛産業、監督官庁は禁輸打破を狙っている。

 保守政治は平和主義に挑戦したいと考えている。9条改正は最終目標だが武器禁輸の見直しもそこに含めている。「普通の国願望」である。また敵視するリベラリズムや革新陣営に政治的打撃を与えたい発想もある。

 防衛産業と関係官庁は目先の利益を求めている。単純な企業による利潤追求と防衛・経産の省益確保である。

 ただ、それを訴えても成功する見込みはない。「憲法の平和主義は誤り」と主張しても国民は耳も貸さない。武器輸出の利潤も日本輸出額からすれば“すずめの涙”にもならない。道義を捨てるに見合うほどの金銭的利益ではない。そもそも今の日本には武器輸出を解禁する切実な必要性はない。

 これは三原則の見直し以降の状況が示している。2014(平成26)年に閣議決定で見直したものの実質的な武器輸出はできていない。日本製武器は

・二流である
・価格競争力がない

ためだが「武器輸出をしてはいけない」「利益よりも不利益が大きい」との抵抗が大きいためでもある。

 だから解禁論者はウクライナを持ち出している。戦況は必ずしも有利ではない。それをあたかも危機であるかのように訴える。それで武器禁輸の国是を覆そうとしている。

 そのような主張を認めるべきだろうか。

 不純ゆえに拒絶しなければならない。なにより正道を踏まない邪道でしかない。仮に武器輸出解禁が必要であるとしても、それは“正攻法”で進めるべきである。

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